Claude Codeの利用状況を可視化したら、チームに予想外の変化が起きた話
はじめに
株式会社メンバーズの佐々木です。
所属している部署では、Claude Codeを開発業務に活用しています。導入から時間が経つにつれ、「使っている人は使っている」という状態になっていきましたが、チーム全体の状況が把握できないことに課題を感じていました。
本記事では、チームのClaude Code利用状況をダッシュボードで可視化した取り組みについて、その動機・構成・そして可視化によって起きた変化をお伝えします。
背景:チームメンバーが利用状況を見られなかった
Claude Codeの管理画面(Console)では、Developer以上のロールを持つ人はメンバーごとの利用状況を確認できます。ただし、一般メンバーは自分以外の利用状況を見ることができません(ロールと権限の詳細)。
つまり「チーム全体でどう使われているか」は管理者には見えても、メンバー間では共有されない状態でした。
「他のメンバーはどのくらい使っているんだろう」
「自分の使い方はチームの中では多い方なのか少ない方なのか」
「どんなスキルを誰が使っているのか」
こういった情報が見えないまま、各自が個別に使い続けている状態でした。AIツールはもともと個人が手元で使うものなので使い方が属人化しやすく、「使っている人はどんどん使えるようになるが、使い始めていない人はどこから始めればいいかも分からない」という構造が生まれやすいと感じていました。
きっかけ:とりあえず可視化してみた
大きな仮説があったわけではありません。
Claude Codeのモニタリング・利用状況の収集に関する記事がいくつか出てきていて、「ああ、こういうことができるんだ、じゃあやってみるか」という程度の動機でした。特に可視化によって何かを変えようと考えていたわけでも、効果を期待していたわけでもなく、「見えない状態が気持ち悪い」という感覚の方が正直なところです。そこから先は特に考えていませんでした。
これが、この取り組みの出発点です。
構成:どうやって作ったか
アーキテクチャ
構成はシンプルで、以下のような流れになっています。
各開発者のPC
↓(OTLP / HTTP)
Cloud Run(OpenTelemetry Collector)
↓
Cloud Logging
↓(Linked Dataset)
BigQuery
↓
ダッシュボード(React + GAS)Claude CodeはOpenTelemetry(OTel)によるテレメトリ出力に対応しており、環境変数を設定するだけで利用ログをOTLPエンドポイントに送信できます。受け取り側はOSSのOpenTelemetry Collector ContribをCloud Run上で動かし、Cloud Loggingを経由してBigQueryに蓄積する構成にしました。
この記事がベースになっています。
チーム展開はMDM配布で自動化
個人的にいちばん楽だったのが、チームへの展開方法です。
Claude Codeには「Managed settings」という仕組みがあり、組織としての設定ファイルをMDMで各開発者のPCに配布できます(公式ドキュメント)。この設定ファイルにOTelの接続先やトークンを書いておくと、メンバーが個別に設定しなくても自動的にログが収集されるようになります。
「設定ファイルを1本配るだけ」でチーム全員のログ収集が始まるのは、思っていた以上に運用が楽でした。
見えるようになったこと
BigQueryに蓄積したデータをもとに、ダッシュボードで以下の2軸を可視化しました。
誰が・いつ・どのくらい使ったか(利用量・推移・コスト)
どのスキルを使ったか(Claude Codeのスキル機能の利用履歴)
前者は日別・メンバー別の利用量推移、後者はスキル名ごとの利用回数として表示しています。
起きたこと:予想していなかった3つの変化
可視化してみたら、いくつか予想していなかった変化が起きました。
利用量が見えたら、自然と会話になった
あるとき、チームの朝会でダッシュボードを画面共有しました。メンバー別の利用量が並んだグラフを見たあるメンバーから、「めちゃくちゃ使ってますね。どういうふうに使ってるんですか?」と声をかけてもらいました。
その日たまたま相対的に利用量が目立っていただけで、普段から特別多く使っているわけではありませんでした。ただ、数字として見える状態になったことで他のメンバーの目に止まり、使い方を共有する会話が生まれました。何をどういう場面で使っているか、どんな工夫をしているかといった話が自然と出てきました。
可視化したから会話が生まれたのか、朝会で共有したから生まれたのかは分かりません。ただ、「数字として見える状態」がなければこの会話は起きなかっただろうと感じています。
スキル利用が見えたら、調べるきっかけになった
別の文脈でも、ダッシュボードが起点になった場面がありました。
あるメンバーからClaudeの活用方法について質問を受けたとき、みんながどんなスキルを使っているか一覧で見られるのでダッシュボードを参考にしてみてほしい、と案内するだけで済みました。
口頭でおすすめのスキルを伝えるより、実際に使われているものが見える状態の方が紹介しやすく、受け取る側もあのスキルは何だろうと調べる動きが自然に起きやすくなったと感じています。
ランキングが見えたら、意識が変わった?(推測)
これは推測の域を出ないのですが、もう一つ興味深いことが起きました。
ダッシュボードにはメンバー別の利用量が並ぶため、自然とチーム内での相対的な位置が見えます。それを見たメンバーから、もう少し使ってみようかなという反応があったり、人ってランキングが気になるものだという声が出たりしました。自分の立ち位置が分かることで、使い方を変えようという動機につながる可能性があると感じています。
ただし、これはあくまで推測です。利用量が多いことがそのままパフォーマンスの高さを意味するわけではありませんし、数字を増やすことが目的化してしまうと本末転倒になります。あくまで利用拡大の一指標として、相対位置が見えることに意味がありそうという程度の話です。
考察:なぜそうなったか
3つの変化を振り返ってみると、それぞれに異なるメカニズムが働いていたように思います。
チームで一緒に見ることで、話しかけるきっかけが生まれる
利用量そのものはClaudeの管理画面でも確認できます。ただ、「個人が自分の状況を確認するための操作」と「チームで画面共有しながら一緒に眺める状況」では、生まれるものが違いました。
同じ画面を一緒に見ていると、「この人はこれだけ使っているんだ」という事実が自然と話題になります。管理画面を開いて確認しに行く行動は起きなくても、朝会で目の前に出てきた数字には反応しやすい。「どういうふうに使っているんですか?」と聞く口実が生まれる、という感覚に近いです。
誰が何を使っているかが見えると、調べるきっかけになる
スキルの一覧を共有しても、それだけでは「で、自分が使うべきスキルはどれ?」という疑問は解消されません。しかし「あの人がよく使っているスキルはこれ」と分かると、「あれ何だろう、聞いてみよう」という気持ちが生まれやすくなります。
知識の伝播には「誰が使っているか」という文脈が重要で、ダッシュボードはそれを自然に提供できると考えています。
相対位置が見えると、近づこうという意識が生まれる(推測)
これは断言できませんが、「自分がチームの中でどのくらいの位置にいるか」が見えることは、行動の動機になりうると感じています。「もう少し使ってみようかな」という気持ちを引き出す効果があるとすれば、可視化のひとつの価値と言えるかもしれません。
繰り返しになりますが、利用量はあくまで利用拡大を測る指標のひとつであり、個人のパフォーマンスや能力を測るものではありません。
まとめ
利用状況を可視化しても、明確な効果測定は難しいです。
今回起きた変化がダッシュボードによるものなのか、朝会で共有したタイミングの問題なのか、チームの雰囲気の変化なのかを切り分けることはできません。
それでも、いくつかの変化が実際に起きたのは事実です。数字として見える状態になったことで、会話が生まれ、スキルへの関心が高まり、使い方を変えようという意識が芽生えました。
「とりあえず可視化してみるか」という程度の動機から始めた取り組みでも、こういった変化が起きる可能性があります。利用状況の可視化が、AIツール活用の裾野を広げるための手段のひとつになりうると感じており、試してみた価値はあったと思っています。
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