"ギャルマインド" からサーバントリーダーシップのなんたるかを学んだ話

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大和 拓朗

2024年06月06日

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※当記事は2024年2月に執筆した記事で、情報は当時のものになります。

はじめに

こんにちは!メンバーズの大和です!
昨年の6月にエンジニア => スクラムマスターへとロールチェンジをしまして、現在は「公開!尊敬!勇気!確約!集中!」と叫び続ける毎日を送っています。

社内でもまだまだ若い役割なため、よく「スクラムマスターって何する人なの?」と聞かれるのですが、そう、スクラムマスターの価値や求められる成果、そして必要なスキルってとにかく複雑で分かりにくいんですよね!

「スクラムガイドに書いてあるじゃん」と言われてしまえばその通りなのですが、スクラム自体がそうであるように、テキストを目でなぞっただけでは到底学び得ない領域がそこにはあります。

理解は容易、習得は困難。

私自身、初めは「こんな感じかな?」と曖昧な理解のままスクラムマスターとして働きつつも、その本質的な部分を理解できないでいました。......というか今もまだ鍛錬の真っ最中なのですが!

特に、スクラムマスターがチームの真のリーダーとして機能するために必要なサーバントリーダーシップについて。何なのだ、これは!どうすればいいのだ!?

そんな悩みを抱えつつ、学び、実践し、対話し、試してはふりかえり......そして現在、私はある一つの気づきを手にしました。

そうか、ギャルになればいいんだ

以下本文です。バイブスアゲ↑↑てついてきてくださいね。

サーバントリーダーシップって?

先にも書きましたが、サーバントリーダーシップって一体なんなのでしょうか。

サーバントリーダーシップを提唱したロバート・K・グリーンリーフ氏、そして彼の考えを分かりやすくまとめたラリー・スピアーズ氏によると、優れたサーバントリーダーには以下の10の属性があるそうです。

傾聴(Listening)
大事な人達の望むことを意図的に聞き出すことに強く関わる。同時に自分の内なる声にも耳を傾け、自分の存在意義をその両面から考えることができる 。
共感(Empathy)
傾聴するためには、相手の立場に立って、何をしてほしいかが共感的にわからなくてはならない。他の人々の気持ちを理解し、共感することができる。
癒し(Healing)
集団や組織を大変革し統合させる大きな力となるのは、人を癒すことを学習する事だ。欠けているもの、傷ついているところを見つけ、全体性(wholeness)を探し求める。
気づき(Awareness)
一般的に意識を高めることが大事だが、とくに自分への気づき(self-awareness)がサーバント・リーダーを強化する。自分と自部門を知ること。このことは、倫理観や価値観とも関わる。
説得(Persuasion)
職位に付随する権限に依拠することなく、また、服従を強要することなく、他人の人々を説得できる。
概念化(Conceptualization)
大きな夢を見る(dream great dreams)能力を育てたいと願う。日常の業務上の目標を超えて、自分の志向をストレッチして広げる。制度に対するビジョナリーな概念をもたらす。
先見力、予見力(Foresight)
 概念化の力と関わるが、今の状況がもたらす帰結をあらかじめ見ることができなくても、それを見定めようとする。それが見えたときに、はっきりと気づく。過去の教訓、現在の現実、将来のための決定のありそうな帰結を理解できる。
執事役(Stewardship)
エンパワーメントの著作でも有名なコンサルタントのピーター・ブロック(Peter Block)の著書の書名で知られているが、執事役とは、大切な物を任せても信頼できると思われるような人を指す。より大きな社会のために、制度を、その人になら信託できること。
人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
人々には、働き手としての目に見える貢献を超えて、その存在をそのものに内在的価値があると信じる。自分の制度の中のひとりひとりの、そしてみんなの成長に深くコミットできる。
コミュニティづくり(Building community)
歴史のなかで、地域のコミュニティから大規模な制度に活動母体が移ったのは最近のことだが、同じ制度の中で仕事をする(奉仕する)人たちの間に、コミュニティを創り出す。

サーバントリーダーシップ
ロバート・K・グリーンリーフ (著), 金井 壽宏 (監修), ラリー・C・スピアーズ (編集), 金井壽宏 (監修), 金井 真弓 (翻訳)
Larry C. Spears(1998).”Tracing the Growing Impact of Servant-Leadership.”In Larry C. Spears ed.(1998).Insights of Leadership:Service, Stewardship, Spirit and Servant-leadership.New York: John Wiley & Sons.pp.3-6の記述より、金井壽宏氏が要約。

なるほど!......なるほど?
抽象的な表現が多く、自身の行動に落とし込もうとした際のイメージがし辛いですね......。目が文字の上を滑っていくのを感じました。

一旦、別の観点から考えてみます。NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会Open in new tab(そんなのあるんだ......)によると、これまでの「支配的なリーダーシップ」と「サーバントリーダーシップ」では、参加するメンバーに以下のような違いがあるそうです。

NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会"サーバントリーダーシップとは

そして、こうしたチームを作るために必要となるリーダーの素養が、先に挙げた10の属性になるわけですね。
しかし、その肝心の属性を一体どう体現すれば良いのか......当初の私はまさにそんな気持ちでいっぱいでした。

ギャルマインドとの出会い

サーバントリーダーシップについて考え続け、夜しか眠れぬ日々を過ごしていたある日、志を共にするSETメンバーからこんな知見を共有してもらいました。

「大和さん、ギャルになるといいらしいですよ」

Speaker Deck. "スクラムマスターを目指すためにギャルになってみた話".https://speakerdeck.com/kinocoboy2/sukuramumasutawomu-zhi-sutamenigiyaruninatutemitahua

はぁーーーーーーーー、マジ卍。

なるほど、サーバントリーダーシップを実践する上でのマインドセットとして、ギャルマインドがかなり役に立つと、そういうことですね。

少なくとも自分がイメージするギャルな方は、明るく、前向きで、仲間を大切にし、フラットで、互いに助け合う....確かに、まさにサーバントリーダーとして望まれる資質を備えているなぁと感じました。

ここで、上記スライド内でも行われていた「ギャルな振る舞いをサーバントリーダーシップ10の属性に当てはめるワーク」を私もやってみようと思います。

  • 「最近の感じだとさぁ......これ絶対流行るって!うちらも今のうちにやっとこ!」
    • 👉 先見力、予見力(Foresight)
    • 👉 人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
  • 「どしたん?話してみ?」「あーね」「わかりみ」「キャパくない?アタシらがついてっから無理すんなし!」
    • 👉 傾聴(Listening)
    • 👉 共感(Empathy)
    • 👉 癒し(Healing)
  • 「んー?このタイピ音......キースイッチ茶軸から青軸に変えたっしょ!?まじクリッキーなんだけどー!」
    • 👉 気づき(Awareness)
  • 「アタシらなら絶対できるって!とりまやってこ!」
    • 👉 説得(Persuasion)
    • 👉 概念化(Conceptualization) 
  • 「これさ......『つけま研究部』発足の流れじゃナイ?とりまアタシ幹事やるわ!
    • 👉 コミュニティづくり(Building community)
    • 👉 執事役(Stewardship)

やはりギャル!ギャルマインドしか勝たん!

眉唾物としてスライドを読み始めた私ですが、読後にはスライドを紹介してくれたメンバーが多少引くくらいギャルマインドに傾倒していました。

ギャルを必要とする社会

共有してもらったスライドを読んでいた時、不意に一つの記憶が思い起こされました

そういえば「ギャルが会議に参加する」をサービスにしている会社なかったっけ?

探してみると該当する会社がすぐに見つかりました。

その名も合同会社CGOドットコムOpen in new tab

CGOはChief Gal Officerの略で、ギャルマインドを活かした会議の促進サービス「ギャル式ブレスト」を提供している会社です。
どんなサービスなの?という部分については大変分かりやすい以下の動画と紹介記事をご覧ください。(5分で見られます)

「みんな敬語禁止~♪ 」企業の会議をアゲる『ギャル式ブレスト』発案者に聞く“心にギャルを飼う”が仕事に与える驚きの効果Open in new tab

はぁーーーーーーーー、マジエグチ(エグさのレベルが違う)

ギャル式ブレストを展開されているギャルの皆さんの行動を観察すると

  • あだ名をつける、敬語禁止によるフラットな関係性、心理的安全性を向上させる場づくり
  • ポジティブシンキングを徹底し、アイデアを否定、批判しない傾聴の姿勢を貫く
  • 肩書きや立場、忖度を排除したコミュニケーションの促進
  • 分かりやすく派手なリアクションをすることで傾聴と共感の姿勢を示す
  • 相手の事情や状況をとことん理解し、執事役として会議の進行を担う
  • イベント後のふりかえりによる改善

など、サーバントリーダーシップを兼ね備えた理想的なスクラムマスターの振る舞いが随所に見られました。

スクラムマスターやアジャイルコーチは、チームや組織の中で「アジャイルやスクラムの専門家」という立場になることが多く、ともするとチームに対して"上から"接してしまいがちです。

ただそうなってしまうと、チームメンバー側も自ずと「教えてもらう立場」すなわち「先生と生徒」のような関係性になってしまって、両者の間に壁が生じやすいという罠があります。

しかしそこにギャルマインドを持ち込むことで、自然とチームメンバーのみんなの所に"降りていく"ことができる......そこに気づいた時、なるほど目から鱗がどっばどばでした。

ちなみに、CGOドットコムさん、2024年 日経クロストレンドの「未来の市場をつくる100社」に選出されたOpen in new tabとのことです。

もはや、時代と社会がギャルマインドを必要としている......そう言っても過言ではないですね。

道化師としてのギャル

ギャル最高ー!と叫ぶ傍ら(誤解が生まれそう)、その時目を通していた書籍Open in new tabにこんな記述がありました。

スクラムマスターは現代の宮廷道化師になる必要がある

宮廷道化師は、主に中世ヨーロッパ時代に貴族を中心に雇われていたエンターテイナーで、イメージの通り芸を用いて人々を楽しませるのが仕事......らしいOpen in new tabです。
また、その道化としての立ち振る舞いから、王族や貴族たちに「なんでも言えてしまう」唯一の存在だったとも言われています。毒舌キャラがキツイ事言っても許される、みたいな感じでしょうか。

そういった特性から、主従関係の激しい貴族社会において「場を引っ掻き回す」役割も担っていたと言われています。上下関係の激しい組織で、イエスマンだらけの環境に一石投じる役割......みたいな。そうすることで、凝り固まった雰囲気をほぐしたり、明らかに誤った案が通されそうになった時に「えー?それホントに面白い?」とふざけながらも再考の機会をもたらしたということです。

こうした振る舞いは、スクラムマスターがチームの障害を取り除こうとする際の振る舞いと似ています。

人はえてして、人間関係をはじめとした複雑な問題から逃げたくなるものです。すぐに解決するのが一番なのにも関わらず、目を背け、まるで問題なんてなかったかのように日々を過ごしてしまいます。

しかしスクラムマスターは、そうした問題を積極的にチームに再提示します。それがチームをより良くするのだと信じて「不都合な真実」にあえて目を向けさせるのです。

そういえば、この問題ってずっと放置されてますけど、どうしてなんですかね?絶対解消した方がいいと思うんですけど

時に少しおどけながら、しかし強い信念を持って問題を再提示する勇気。これがスクラムマスターに必要な道化師としての役割だと私は考えています。

そしてこれを読んだ時、頭をよぎったのがまたしてもギャルでした。

てかさ、なんでこれ放置してんの?ぱっぱと片付けちゃおーよ!

悪びれることもなく、臆することもなく、あっけらかんとチームの「不都合な真実」を放り込む。そんなギャルの姿がなんとも自然にイメージできてしまいました。

......あれ、ギャルマインドってチームの宮廷道化師として振る舞う上でめちゃめちゃ重要なのでは?(天啓)

もちろん、こうした発言ができるのは、人柄やキャラが特別だということだけでなく、チームとの間に深い信頼関係があるからでしょう。普段からサーバントリーダーシップを遺憾なく発揮し、執事役として徹底的に奉仕する。そうした実際の振る舞いが、人の心を動かしていくのだと思います。

ギャルマインドと歩む道

私の心の中には今、ギャルが住んでいます。

この10月からスクラムマスターとして案件稼働をしているのですが、チームに対してのファシリテーション、問いかけや振る舞いで迷った時、私はその「心に住むギャル」ならどうするかを考えるようになりました。

  • もっと気持ちよく話してもらいたいな...... => 「そんでそんで?」「え、すごくない?」(リアクションや相槌)
  • このバックログアイテムって「なぜ」やるんだっけ? => 「ねぇねぇ、これってなんでやんのー?」(問いかけ)
  • いい雰囲気!もっと盛り上げたい! => 「え、めっちゃいいじゃん!」「やってこやってこ!」(盛り上げと背中押し)
  • チームが新しいふりかえりのやり方に積極的だ! => 「いいじゃん!アタシよさげなの色々探してくるわ!」(肯定と執事役)
  • お客さんが「あだ名」希望してる! => 「じゃぁ......ジャンボで!」(フラットな場づくりと心理的安全性の向上)

もちろん自身の言葉やテキストとして何か発信する時にはフィルターを通していますが、その前段ではこうしたギャルマインドによる思考・言語化を行うようになりました。

まだまだ修行中の身なので咄嗟にギャル的思考が出てこないシーンも多いのですが、実際、現在のチームは非常に雰囲気が良く、常に前向きにプロダクト開発を行えています。チームメンバーの元々の気質による部分もちろんあるとは思いますが、確実にその効果を実感していますね!

さいごに

サーバントリーダーシップは何もスクラムマスターだけに有用な哲学ではありません!チームリーダーやマネージャーはもちろん、チームや個人の成長、成功を願う全てのリーダーにとって重要な考え方です。

そしてそれを体現しようとした時、ギャルマインドがきっとあなたの背中を押してくれるはず!

一緒にアゲ↑↑なギャル、やってこ?

この記事を書いた人

大和 拓朗
大和 拓朗
2018年にメンバーズに中途入社。Webアプリケーションエンジニアとして開発を行いながら、チームへのスクラム導入・推進役を担当。2022年に、よりスクラムに精通した人材となるべくCertified ScrumMaster®の資格を取得。現在はスクラムマスターとして社内のアジャイル文化醸成を行いつつ、クライアント向けにチームの立ち上げやスクラム導入支援を行っています。
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