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新任リーダー必見|ファシリテーションから始めるリーダーシップの第一歩!

はじめに

「今日からあなたがリーダーです」

もし突然そう告げられたら、あなたは何から始めますか?
経験はあっても、いざリーダーとして振る舞うとなると戸惑う方は少なくありません。

本記事では、その最初の一歩として役立つ「ファシリテーション」というスキルに注目し、実践事例とともに紹介します。

チームや組織の中でリーダーのポジションになった方、特に「何から始めたらいいか分からない」と感じている方へ。最初の一歩として「ファシリテーション」から始めてみるのはいかがでしょうか?

まず、リーダーってどんな役割?

「リーダー」と一言で言っても、その定義は実にさまざまです。

ここでは、最近話題の「Scrum Guide Expansion PackOpen in new tab」におけるリーダーシップの説明を引用してみます。

リーダーシップとは、人々のモチベーションを低下させることなく、共通の目標を達成するために、集団に影響を与え、導き、鼓舞する能力です。思考、行動、そして情熱を刺激し、明確な戦略的方向性を育みます。(中略)リーダーシップとは、責任、人間関係の構築、そしてエンパワーメントを伴う、ダイナミックな社会的プロセスです。成功するリーダーシップは、進むべき方向性を共に創造し、必要な資源と人材を効果的に調整し、グループメンバー間の相互コミットメントを生み出します。

(原文を機械翻訳)

この説明からわかるように、リーダーとは組織やチームが共通の目標を達成できるよう、メンバーを導き、モチベーションを高める役割を期待される人だと言えるでしょう。

具体的には、以下のような立場の人たちがリーダーシップを発揮することを求められます。

  • 開発チームにおけるリードエンジニア
  • スクラムにおけるスクラムマスターやプロダクトオーナー(特にスクラムマスターはスクラムガイドの中で「真のリーダー」と定義されています)
  • プロジェクトを推進するPMO、PM
  • グループ単位での目標達成や安定性に責任を持つエンジニアリングマネージャー

    etc...

リーダーとプレイヤーの違い

リーダーとしての役割をより深く理解するために、プレイヤーとの違いを「因果関係」の視点から比較してみます。

ある出来事が原因となり、ある結果が引き起こされている状況を想定します。


プレイヤー的感覚:行動と結果が直結する視点

まず、プレイヤーは、自身の行動と結果が強く直結していると捉えます。この認識のあり方を「プレイヤー的感覚」と呼ぶことにします。

プレイヤー的感覚の中では、例えば「私が〇〇機能の実装をした。結果、予定通りリリースができた。」のような形で因果関係をとらえます。

このプレイヤー的感覚の特徴は、自身の行動以外の原因に意識が向きづらい点です。自分が行ったことと結果が強く結びついているため、実は他の複数の原因も結果に影響を与えていることに気づきにくい傾向があります。

リーダー的感覚:全体を俯瞰し、間接的に影響を与える視点

一方で、リーダーは因果関係全体を俯瞰し、各原因に働きかけることで間接的に結果に影響を与えます。これを「リーダー的感覚」と呼ぶことにします。

例えば、リーダーは以下のような働きかけを通じて、最終的に引き起こされる結果に影響を与えます。

  • ビジョンやゴールを設定する
  • チームの体制を整える
  • メンバーのモチベーションを向上させる
  • メンバー間の関係性を良くする
  • 働く環境を改善する


もちろん、状況によってはリーダー自身が積極的に手を動かし、結果に直接影響を与える場面もあります。しかし、不確実性の高いプロダクト開発などの領域においては、全体像を捉え間接的に影響を与える「リーダー的感覚」を持って振る舞うことが、より良い結果につながることが多いでしょう。

リーダーが直面する壁:「プレイヤー的感覚」からの脱却

リーダーになると、自分が直接手を動かすのではなく、他者に影響を与え、集団全体として結果を出すことが求められます。

しかし、プレイヤー的感覚のままリーダーを担うと「リーダーとして何をすればいいんだろう?」と戸惑ってしまうことがあります。リーダーとして成果は求められるのに、具体的な解決策が見えないため以下のような状態に陥りがちです。

  • リーダー自身がタスクを抱えすぎて疲弊する
  • メンバーへの指示的なコミュニケーションが増える
  • 最悪の場合、思考停止に陥り何もできなくなる

このような状態になってしまうのは、まさに「プレイヤー的感覚からの脱却」ができていないことが原因です。

プレイヤー的感覚からの脱却を促す「ファシリテーション」

では、どうすればプレイヤー的感覚から脱却し、リーダー的感覚を養うことができるのでしょうか? そのヒントが「ファシリテーション」にあります。

ファシリテーションとは何か?

日本ファシリテーション協会Open in new tabの説明を引用してみます。

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。

ファシリテーションは、第三者的な立場から集団の活動を支援し、良い結果を生み出すための技術です。

よく会議の司会と混同されがちですが、ファシリテーターは単にアジェンダ通り議論を進めるわけではありません。状況を俯瞰的に観察し、状況に合わせて場作りや問いかけを行うことで参加者に働きかけ、予定調和的ではないより大きな成果を生み出します。

この技術を学び、実践することは、リーダーとして必要な「全体を俯瞰し、間接的に影響を与える」というリーダー的感覚を養う上で非常に有用です。

例えば、あるレトロスペクティブで次のスプリントの改善策を考える場面を想像してください。

ファシリテーターとしてチームに貢献するために、例えば以下のような段階的な働きかけが有効です。

【1】場づくり・安心感の醸成

  • レトロスペクティブの目的とゴールを冒頭で明確に伝える
  • アイスブレイクで空気をほぐし話しやすい場をつくる
  • 自分の声や表情にも明るさを加え心理的安全性を高める
  • miroなどのホワイトボード環境を整えて意見を出しやすくする

【2】対話の設計と思考の深堀り

  • チームの状況に合ったふりかえりフレームを選ぶ
  • 投票機能などを活用して関心が高いテーマを可視化する
  • 「何が原因ですかね?」など、原因探究を促す問いを投げかける
  • あえて自らは沈黙し、参加者同士の対話を活性化する
  • TRYを具体化する問いを投げかけ「具体的な行動」に着地させる

【3】チームの自走を促す仕組み化

  • こうした動きが自分不在でも継続するよう、場づくりをチームに委ねていく

ファシリテーターは基本的には「次のスプリントは〇〇をTRYとしましょう」のような提案、あるいは意思決定はしません。あくまで第三者として状況を俯瞰し、チームがより良い結果を生み出せるように働きかけ続けます。

この姿勢はまさにリーダー的感覚の表れです。

実際に現在私がアジャイルコーチとして関わっている案件でスクラムマスターを担ってくれているメンバーには、まず最初にレトロスペクティブのファシリテーションをしてもらっています。レトロスペクティブの終わりには1on1でファシリテーション自体についてのふりかえりをすることで、実践と学びのサイクルを回しました。

これを繰り返す中で、チームの1メンバーとしての視点からよりチーム全体を俯瞰する視点を獲得したように見えました。さらにはレトロスペクティブ以外の場でも状況全体を俯瞰し、間接的にチームに影響を与えるような振る舞いが見られるようになったのです。

まさにファシリテーションによってプレイヤー的感覚からリーダー的感覚への転換が起きたと言えるのではないでしょうか。

さいごに

リーダーシップは、決して特別な才能や生まれ持った資質だけで決まるものではありません。それは、日々の実践と学びの中で育まれるスキルであり、特に「全体を俯瞰し、間接的に影響を与える」というリーダー的感覚を磨くことが重要です。

そして、その最初の一歩として「ファシリテーション」は非常に有効な手段だと私自身の経験から感じています。ファシリテーションスキルを磨くことを通じて、きっとこれまでとは違う視点やチームを動かす新たな「力」を発見できるはずです。

もし今、「今日からリーダー」という状況に直面しているのなら、ぜひ「ファシリテーション」から始めてみてはいかがでしょうか?それが、あなたのリーダーとしての道を切り開く第一歩となるかもしれません。

この記事が、あなたのリーダーとしての第一歩を踏み出すヒントになれば幸いです。

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この記事を書いた人

小島 啓輔
小島 啓輔
2019年に中途でメンバーズに入社。エンジニアとして2年間ほど開発業務を経験した後、スクラムマスターに転向。現在は、クライアント企業のスクラムチーム支援や社内のアジャイルコミュニティ運営など通じて、社内外のアジャイル・スクラム推進に尽力している。趣味は娘と遊ぶこと・釣り・料理。
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