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【DX推進者必見】経産省・IPAのデジタルスキル標準から考えるトレンドとスキルセット

はじめに 

株式会社メンバーズの小池です。
これまで様々なプロジェクトの責任者やPM、PMOを務めてきました。現在はPMO事業のマネージャーとして顧客企業のプロジェクトを支援しています。

日々お客さまと会話していて話題になるのは、プロジェクトを推進できる人材が足りておらず、育成もできていないという内容です。

そもそも、IT業界には従来から「プロジェクトマネージャー(PM)」や「プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)」というロールが存在していました。
しかし¹ VUCA時代において、単にプロジェクトを管理するだけではなく、より柔軟で価値創出に近い役割が求められるようになってきています。

そうした背景から、今あらためて注目されているのが、IPA(情報処理推進機構)と経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」です。
この標準には、DXにおける人材像や必要なスキルセットが明示されており、PM・PMOがどう進化していくべきかを読み解く手がかりが詰まっています。
PMOとは単なるプロジェクト支援者ではなく、ビジネスアーキテクト的視点を持って価値創出の現場に立つ存在です。

そのためこの記事では、PM(Project Management)やPMO(Project Management Office)、他業務を兼務しているリーダーの皆さまに向けて、「デジタルスキル標準」を基にプロジェクトマネジメントに関わるトレンドとスキルセットを解説していきます。
その中で、PMOにとってこのスキル標準がなぜ重要なのか、その意義も一緒に紐解いていきます。

¹ VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、予測困難な現代の社会状況を表します。

デジタルスキル標準とは

デジタルスキル標準は、ビジネスパーソンがDXに関する基礎的な知識やスキルを身につけるための指針です。経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が共同で策定し、DXリテラシー標準¹ (DSS-L)とDX推進スキル標準²(DSS-P)の2つで構成されています。

¹ DXリテラシー標準(DSS-L:Digital Skill Standard – Literacy)
² DX推進スキル標準:(DSS-P:Digital Skill Standard – Practice)

▼デジタルスキル標準(DSS-L/DSS-P)の違いと対象者・内容のまとめ

区分

名称

対象

内容の概要

基礎

(全員向け)

DXリテラシー標準
(DSS-L)

すべての

ビジネスパーソン

(経営層含む)

- DXの背景
- デジタル技術の基礎知識
- データや技術の利活用
- マインドセット・スタンスの醸成

実践

(専門人材向け)

DX推進スキル標準
(DSS-P)

DX推進に関わる
専門人材

主要5ロールごとに、必要なスキルとその重要度を定義し、学習項目例を提示。

主要5ロール:

・ビジネスアーキテクト(プロダクトマネージャー)
・データサイエンティスト
・サイバーセキュリティ
・ソフトウェアエンジニア
・デザイナー

これらの標準は、企業がDXを推進するための人材育成や採用の指針として活用されます。

デジタルスキル標準の構成

デジタルスキル標準は、以下のようなスキルセットを含んでいます。

  • データ活用スキル: データの収集、分析、活用方法。
  • デジタル技術スキル: AI、IoT、クラウドコンピューティングなどの技術理解。
  • プロジェクトマネジメントスキル: プロジェクトの計画、実行、監視、評価の方法。

PMOの役割と必要なスキルセット

PMOの役割とは?

PMOはプロジェクトの成功を支援する役割を担います。DX推進スキル標準ではビジネスアーキテクト(プロダクトマネージャー)の隣接ロールと言えるでしょう。具体的には、以下のような役割があります。

  • プロジェクト管理
  • ファシリテーション
  • リスクマネジメント
  • ステークホルダー調整

これらの役割を担当しつつ、現実的には何かしらの専門機能を兼務することが多いでしょう。ビジネスに強ければ業務設計、エンジニアリングに強ければ仕様定義、データに強ければガバナンス整理など。
プロジェクトにおいて常に満足なスキルセットを兼ねたチームを構成することが難しいこともありますが、何よりも5ロールで考えたときに誰しもどこかの領域に強みを発現していくからだと私は考えています。
私自身はソフトウェアエンジニアリングとデザインの知見をベースに、現在はビジネスアーキテクチャ(プロダクトマネジメント)領域にスキルツリーを伸ばしています。

外注から内製化へ:PMOトレンド

「DXの本質とはなんでしょうか。」
これは問いの立て方次第で様々な回答がありますが、ここでは一つ、デジタルの手の内化こそが本質であると言わせてください。

経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」では、以下のような記述があります。

日本の産業構造は、ユーザー企業は既存業務の効率化を目指してデジタル投資を委託し、ベンダー企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」を行ってきた結果、デジタルサービス競争を勝ち抜いていくことが困難な「低位安定」の関係に固定されてきた。

(参考:経済産業省 半導体・デジタル産業戦略検討会議Open in new tab

ユーザー企業はデジタルをパートナー企業に依存し、パートナー企業はブラックボックス化によりロックインする関係です。
しかしDXを進めるということは、企業がビジョンや目標を達成するために価値・サービス・製品の提供の在り方を、デジタルを用いて変革していくということです。
そのためにも、デジタル領域の内製化を進めていくことは当然の流れと言えます。

DXの本質と内製化の必要性

一方で、自社だけで全てを賄うのは難しいと各社気づいていますし、それは本質的ではありません。コアな技術・仕組みは自分達で制御しつつ、コストメリットや外部専門性の活用という観点でパートナーシップを構築していくこと。これこそがデジタルの手の内化であり、迅速にDXプロジェクトを推進する機動力となるのです。

PMOにおいては、プロジェクトの成功を支援するという役割は変わらないまま、支援の形が、受託で持ち帰りプロジェクト型ではなく、プロジェクトリーダーの隣で伴走支援する形式が多くなっています。

DX時代のPMOについては弊社記事も参照いただけると幸いです

必要なスキルセットと「デジタルスキル標準」への向き合い方

DX推進のためにPMOには以下のスキルセットが必要です。

  • コミュニケーションスキル: チームメンバーやステークホルダーと円滑に連携し、状況を正確に伝え、共有する能力。
  • リスクマネジメントスキル: プロジェクト進行上のリスクを特定し、適切に対処する能力。
  • デジタル技術スキル: 最新のデジタル技術に関する知識を持ち、プロジェクトに活用していく能力。
  • リーダーシップスキル: 多様なメンバーをまとめ、プロジェクトを成功に向けて導く能力。

メンバーズ独自の「デジタルスキル標準」調整の観点

経済産業省が公開している「デジタルスキル標準」は、非常に包括的であり、各企業がそのまま導入するのは難しい場合があります。
メンバーズでは自社のサービスの性質などを考慮して、独自の調整を行いスキルセットを定義しています。

デジタルスキル標準の調整例

メンバーズでは、以下のようなスキル領域を調整・整理しています。

スキルカテゴリ

スキル項目

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメント形式知

ビジネス変革

ビジネスアナリシス

要求(要件)定義

ビジネスモデリング

UXデザイン

デジタルスキル

システム/プロダクト開発

データサイエンス

デジタルマーケティング

生成AI

これらを全社横断軸・事業部軸で育成し、お客さまのプロジェクトの成功を支援しています。

育成の取り組みと今後の展望

育成は自社で内製しているものや外部パートナーと一緒に取り組んでいるものなどがあり、今後も投資をしていくと思います。

少なくとも、私が所属しているPMO事業では中期事業戦略において3カ年で385人のPMO人材輩出を目指しています。興味を持ってくださった方は、今後の動向を楽しみにしていてください。

▼プレスリリース

まとめ

デジタルスキル標準は能力開発に対する有益な示唆を得られます。
本記事が少しでも皆さまの日々に貢献できれば幸いです。
デジタルスキル標準を活用し、組織全体のDXを推進し、自分達のキャリアを積み重ねていきましょう!

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この記事を書いた人

小池将史
小池将史
金融・ECのお客さまを中心に様々なプロジェクトを経験し、責任者として新規事業立ち上げ、PMO事業に統合し同事業のマネージャーを務める。プライベートワークではプロダクトマネジメントのイベントとソフトウェアテストのNPO法人に携わる。
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