【第6回/生成AI活用】日本CTO協会主催 新卒エンジニア合同研修潜入レポート
はじめに
はじめまして、株式会社メンバーズ25卒の蒔苗です。
今回、6月18日に開催された日本CTO協会主催 新卒エンジニア合同研修 第6回目「生成AI活用研修」へ参加させていただきましたので、本記事にて研修内容をお伝えしてまいります!
本研修へ参加したのは、弊社からは6名、他会社も入れると100名以上の新卒社員の方々が参加されていました。
日本CTO協会主催の新卒エンジニア研修開催の背景
昨今、様々な会社でエンジニアが積極的に採用されています。ただ、日本では人口減少やDX推進等の影響により、エンジニアが足りていない会社が多くあります。このようなエンジニア不足の解消を目的とし、次世代のエンジニアを育むため本研修プログラムが開始されました。
※詳細については下記を参照
第2回目の研修も参加させていただきました。こちらもぜひご覧ください。
また、同じ会社の同期だけでなく、他会社の同期といった横のつながりを増やすため、講義と同等のボリュームで懇親会も執り行われました。
「AI-Native」な世界の到来
今回の研修は、マイクロソフトが提唱する「AI-Native」な世界の到来を背景に開催され、マイクロソフトにてエバンジェリストとして活躍されている柳原伸弥氏が登壇されました。
マイクロソフトは1985年のWindows 1.0登場によるGUIの民主化、2010年のAzure登場によるサービスとしてのクラウド提供に続き、2025年を「AIエージェント元年」と位置づけています。
現在、GitHub Copilotの利用者数は1500万人を超え、GitHubのユーザーは1億5000万人ですが、マイクロソフトは最終的に10億人がAIを使ってアプリケーション開発をできるようになる世界を目指しているとのことでした。
社会全体でAIを使って効率化を進めようというムーブメントが起きている中、ソフトウェア開発のライフサイクル全体にAIが関わるようになるため、私たちの働き方にも大きな影響を与えることを講義を通して伝えていただきました。

従来の開発スタイルからの抜本的な脱却
「ソフトウェア開発のライフサイクル全体において、AIが関与するようになる」と先述しましたが、柳原氏はこの点について、企画段階から実装、テスト、さらには運用に至るまで、AIが深く関与してくると述べられました。
アジャイルやウォーターフォールといった開発スタイルは、今後大きく変化していきます。その変化の方向性として、ソフトウェア開発は「命令的開発」(具体的に何をすべきかを指示する)から「宣言的開発」(どうあるべきかを定義する)へと移行し、さらにその先にはAIが主導する開発が見込まれています。
実際、言語の歴史からみても、1950年代の機械語から始まり、C言語やJavaといった高級言語、そして抽象化を進めるフレームワークの登場を通じて、「何をすべきか」という命令的な記述から、「どうあるべきか」という理想の状態を定義する宣言的な記述へと変化してきました。
この宣言的なアプローチは、TerraformやKubernetes(k8s)のYAMLファイルによるインフラ定義など、クラウド環境の基盤側で先行して普及しました。
現在では、宣言的な思想がアプリケーション開発にも適用可能となり、プロンプトに対し「こうあるべきだ」と伝えるだけで、コーディングエージェントがその内容に基づいたコードを自律的に生成します。これは「自然言語そのものがプログラム言語になる」とも言える未来を示唆しており、「Intent-Driven Development(意思駆動開発)」と呼ばれています。
現在の開発は「AI支援開発」(AIが人間の思考を補助する段階)にありますが、将来的には「AI駆動開発」へと移行すると予測されています。AI駆動開発では、AIが自律的に計画、コード生成・実行、デプロイ、そしてその監視を行い、さらにその稼働状況から学習して次なる計画に結びつけるという再帰的なループが構築されることになります。
ただし、ここで重要なのは、AI駆動開発におけるAIが「AI自身が考えて作っているわけではない」という点です。AIはあくまで膨大なデータから確率的に最適なアウトプットを「推論」しており、最終的な成果物の「確からしさ」や倫理的な側面のバリデーション(検証)は、人間が引き続き担うべき役割となります。
このような変化により、従来の人間主導型のアジャイルやウォーターフォールといった開発スタイルは抜本的に変わっていくとされています。
エンジニアの役割は「AIオーケストラの指揮者」
エンジニアの役割は、大きく変貌を遂げます。これまでは「美しいソースコードを書くこと」がエンジニアの腕の見せ所でしたが、これからは「AIに対して適切な指示を出す能力」、つまり「ソースコードを作る意図を的確に伝える構造化力」が極めて重要になります。いかにAIに上手なアウトプットを出させるかが、これからのエンジニアの腕の見せ所となるのです。
この新しい役割を柳原氏は「AIオーケストラの指揮者」と表現されていました。
AIという強力なツールを駆使し、それぞれのAIエージェントに指示を出し、全体を調和させて素晴らしいソフトウェアという「楽曲」を創り上げるイメージです。これにより、誰もがフルスタックエンジニアになれる時代が到来すると考えられています。
マイクロソフトの予測では、2024年初頭には14%だったAIコードアシスタントの利用率が、2028年には90%に達するとされています。
このようなAI活用の普及に伴い、開発スタイルは従来の「ペアプログラミング(人間が主導しAIが支援)」から「ピアプログラミング(AIが特定の作業を完全に自律的に代行する)」へと変化していきます。このピアプログラミングにおいて、エンジニアは主に以下の4つのフェーズからなる新しい開発ループの「プロンプト」と「バリデーション」に注力することになります。

また、プロダクトマネージャー(PdM)やプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の役割も今後、重要視されていきます。要件を見極める能力やAIが生成した成果物の「確からしさ」や「倫理性」を最終的に判断し、検証する役割は、当面の間、人間が担うからです。
そして、AIに的確な指示を出す上で、大切なのが「クリティカルシンキング」です。AIは人間のように「行間を読む」ことが苦手です。特に、日本人は行間を読んでもらうことを前提として話すことが多く、これはAI駆動開発において絶対的悪手です。
指示が曖昧だとハルシネーション(誤った情報を生成すること)を起こしてしまう可能性があります。これを防ぐためには、自分の意図を明確に、そして構造化してAIに伝える能力が不可欠となります。何をやりたいのか、何を求めているのかを的確に分析し、表現するスキルが、これからのエンジニアにとっての生命線となると強調されていました。
最後に
「AI-Native時代」は、単なるツールの進化ではなく、ソフトウェア開発の思想とエンジニアのキャリアパスそのものに大きな変革を迫っています。この変化の波を乗りこなし、AIを「息をするように」活用していくことが、これからのエンジニアにとって重要なスキルとなります。
私も、「やるべきこと」をAIに任せ、時短で生まれたリソースを「やりたいこと」に費やし、自分のキャリアをより尖ったものにしていきたいと思います。
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