Oxygen Not Included で「持続可能な開発」の難しさを体感しよう!
この記事は「BEMA Lab Advent Calendar 2025」の1日目の記事です。
※本アドベントカレンダーの初回投稿となります。
はじめに
私が所属するメンバーズでは、「脱炭素」や「持続可能社会」をキーワードに様々な活動を行っています。 しかし、私自身の担当業務は直接それらに関わるものではなく、壮大なテーマを自分事として捉えにくい側面もありました。
メンバーズのミッション
“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る
VISION2030
日本中のクリエイターの力で、気候変動 ・ 人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする
しかし、ある一本のゲーム「Oxygen Not Included」と出会い、今では「持続可能な開発ってこういう事だよな〜」と言えるくらいのメンタルになりました。本記事では、このゲームの面白さを紹介しつつ、プレイを通して体感した「持続可能性」の本当の難しさについて語ります。
Oxygen Not Included とは?
Oxygen Not Included は地下の世界に放り出された「デュプリカント(複製人間)」に注文を出して、彼らが快適に過ごせるようにコロニーを発展させていくゲームです。正式リリースは2019年と時間が経っていますが、プレイヤー次第で無限の遊び方ができる素晴らしいゲームです。
これまでに4種類のDLCが発売されるなどアップデートもまだまだ活発です。Steam で配信されており、 Windows でも MacOS でもプレイできます。
ゲームについて詳しく説明すると長くなりますが、最高に分かりやすい Daisuke Maki さんの記事があります。ぜひそちらをご覧ください。
Oxygen Not Includedが異質なゲームである理由
私は記事にもある「builderscon tokyo 2019」に参加してこのゲームを知りました。同ジャンルのゲームはいくつかありますが、その中でも「現実の科学や物理法則に従った世界観」に重きを置いているのが最大の特徴です。
酸素が無い
デュプリカントは酸素と食料を消費して生活します。特に酸素は大量消費するのですが、地下世界にはあまり酸素が満ちていません。序盤では「緑藻」という素材があり、簡単に酸素を得ることができます。しかし、緑藻はすぐに尽きてしまう程度の量しかありません。下の図はだいぶ運が悪いケースですが、緑色にハイライトされている部分だけが緑藻です。

緑藻が尽きてしまった場合、次に酸素の素となるのは「水」です。下の画像でいかにも水っぽく描写されている部分がそうです。水を電気分解することでかなりの量の酸素を得ることができます。左下にある黄色い水は「汚水」で、こちらも浄水すれば同様に酸素にできます。

しかし、電気分解を行うまでには多くのステップを踏む必要があります。具体的には「電化」です。水を運ぶポンプ、それを動かすための発電、電線、配管、・・などが必要です。そのための「研究開発」なども挟まります。また、デュプリカントには食事も必要です。酸素・食料を保ちつつ研究にも精を出す必要があり、人手も足りない状況になるでしょう。
温暖化による死は突然に
水の電気分解は大量の酸素を安定供給してくれて素晴らしいのですが、実はかなりの熱源になります。電気分解に限らず、このゲームではありとあらゆる機械が熱を発生させます。初期状態では20℃程度だったコロニーが、気付けば30℃になっていた・・なんてことがあります。
デュプリカントは 40℃ くらいであっても生活できるので、温暖化が直接の死因になることはありません。しかし、別の生き物は生きていけなくなります。例えば「植物」などは温度変化に敏感で、すぐに育たなくなってしまいます。
カロリー源として優秀で育てやすい植物は 30℃ 以上では育たないものが多く、それらをカロリー源として依存しているコロニーは温暖化によって滅亡してしまいます!
滅亡のフローチャート
上述したストーリーを改めてフローチャートの形で表現してみました。実際にゲームをプレイしてみると、これ以外のさまざまな要因で「何か」が止まり、酸素かカロリーかのどちらかに問題が生じます。コロニーを何となく拡張していくと高確率で死に至るところがこのゲームの面白いところで、「持続ってこんなに難しいの??」を体感できると思います。

なぜコロニーは滅亡してしまうのか
このゲームでは一定時間毎に「デュプリカントを追加する」つまり、雇用ができます。ゲーム序盤では人手がいくらあっても嬉しいため、まず何人かを雇用するでしょう。プレイヤーとしては、作業者の手が多いほうが注文の処理速度が上がってストレスが少なくなりますし、コロニーが成長していくのを見るのも純粋に嬉しいです。
しかし、多くの場合は「時期尚早な規模拡大」が崩壊の要因だと思います。個人的には「キャパシティを意識し、常に余裕がある設計をしておく」ことが最も重要だと考えています。人口を増やしたいのであれば、水・食料・電気が余っている必要があります。少しでも無理がありそうなら人口を増やすことを諦め、ゆっくりと成長することを選ぶのが良いでしょう。これは組織運営においても同じことが言えるのかもしれません。これはまさに「持続可能な開発を実践する」という話になるのではないでしょうか。
なお、ゲームのテクニックとしては「温度を交換して高温を集約する」「熱を電気に転換すること」などもあります。経験のあるプレイヤーは熱の管理をしっかりやるはず。コロニーの持続性を高めるためには温度面でのキャパシティも計算できることが大事ではないかと思っています。
私が Oxygen Not Included で学んだこと4選
ここまでの説明でこのゲームの面白さ、難しさが十分に伝わったであろうことを期待しています。締めとして、5年間ほどプレイし続けた私が変化したメンタルについて語り、記事のまとめとしようと思います。おそらくは現実社会にある課題ともリンクしているものが多いです。
食料は消費される量よりも、腐ってしまう量のほうが多い
いわゆるフードロス問題です。このゲームをプレイして以来、私は消費期限が長い缶詰食品などがかなり好きになり、ローリングストックするようになりました。ローリングストックは「一時的に供給が断たれた」場合でも困らなくなるため、ゲームにおいても現実においても有用だと考えています。
なお、このゲームでは「絶対に腐らない食べ物」があったり、一定の条件を満たせばどんな食物でも腐らない状態を作れます。経験のあるプレイヤーは絶対に腐らせないタイプの冷凍庫を実装できますが、これだけで食料問題はほぼ発生しなくなります。逆に、食物の腐敗が起こりえる場合はどれだけ食物の供給をしても食料問題が発生します。
現実でも -40℃ くらいで保存するとかなり劣化が抑えられるらしいです。超低温冷凍庫を導入してみたいですね。
食の多様性は生活を守る
上の延長で「住民に安定してカロリーを供給したい」話です。カロリー源として「30℃で育たなくなる」植物1つに依存していると、ちょっとした温度変化で崩壊します。ですが、30℃以上で育つ植物もいますし、ツンドラのように 0℃ に近い環境で育つような植物もあります。また、環境を整えれば動物の肉や卵も安定したカロリーを供給してくれます。
カロリー源の多様性を保っておくと、調理によって美味しい食事を提供できるようになりますし、何より「1つが断たれても他のカロリー源で生存できる」ことになり崩壊を防ぎます。
安全で安定した水や電気の供給は非常に困難
このゲームには「菌」の概念もあり、上水・下水のコントロールをしないと食中毒が蔓延します。
水源に限りがあるコロニーの場合、浄水を徹底する必要があり「クリーンなコロニー」の運営が難しくなります。安全な水を手軽に飲める状態を維持するのはかなり難しいことが体感できると思います。
日常生活でも水を大事にしようと思いますし、手洗いのためにはしっかり水を使おうと思えるようになるでしょう。
電気についても現実よろしく「同時同量の原則」を守ることが大事になっていますが、これを実装するのは本当に難しいです。停電が少ない&停電してもすぐに復旧できるインフラへの感謝が深くなります。
気体の運搬は効率が悪い
「ガスポンプを使って酸素を配る」ことがよく必要になりますが、実は電力効率があまり良くないです。240W で 500g/s の気体を運搬できますが、これはデュプリカント5人分の呼吸を賄える程度です。コロニーの規模が20人程度の場合、4つのポンプが必要となりますし、配管も大変になります。それに対して液体ポンプは同じ電力で 10kg/s を運搬できます。
現実でも、大型のショッピングセンターや高層ビルでは換気などのために「気体を運ぶ」ことに電力が使われていると思います。これが全体の何割くらいを占めるのだろうか・・ということにも思いを馳せてしまいます。現実でもおそらく運搬効率は気体よりも液体の方が高そうに思います。
さいごに
今回は Oxygen Not Included というゲームを介して社会課題に思いを馳せてみました。この記事を見て気になった方はぜひ購入してみてください!
この記事を書いた人

関連記事

【2025年10月版】人気記事ランキング|スクラム・キャリア...BEMALab 編集部
10日間のインド出張!インドはカレーだけではない!感想と学ん...Nicolas Christopher
【2025年9月版】人気記事ランキング|スクラムイベント・X...BEMALab 編集部
What is BEMA!?
Be Engineer, More Agile


