【Cursor】AIエージェント活用のベースを整える。技術と心理の両面から作るマインドセットと土壌づくり
この記事は「BEMA Lab Advent Calendar 2025」の8日目の記事です。
※本アドベントカレンダーの8日目の投稿となります。
はじめに
初めまして、株式会社メンバーズの船山です。
現在は24新卒としてWebアプリ開発業務に従事しています。
昨今、AIエージェントの進化と普及の勢いが止まらず、GitHub CopilotやClaude、そして今回取り上げるCursorなど、開発者の右腕となるツールが次々と登場しています。
「AI活用で開発効率は上がる」と期待が高まる一方で、その導入には心理的な抵抗やAI活用のスキルギャップが生じているのも事実です。
そこで本稿では、Cursorを中心にAIエージェント活用のベースを整える方法を紹介しつつ、このスキルギャップを埋めるための実践的なワークフローとアプローチについてご紹介します。
AIを積極的に利用するための土台を作る
具体的なツールの使い方に入る前に、まず大切になるのが「AIを受け入れるための土壌づくり」です。どれだけ便利なツールを導入しても、使う側の心理的な障壁やチーム内の認識にズレがあっては、その効果を十分に発揮することはできません。
AIを使用しているときの心理負担の軽減
AIを積極的に活用しようと決めても、以下のようなモヤモヤとした不安を抱えてしまうことはないでしょうか。
- AIが優秀すぎて、漠然と「自分の仕事が奪われていくのではないか」という感覚に陥ってしまう
- エラーを解決する際に自分で原因を考える過程が少なくなり、答えを導く力が欠けてしまうのではないかという懸念
- エンジニア領域外の方がアウトプットを量産しているのを見て、劣等感を抱いてしまう
このように、AIを極力使わずにロジカルに考える姿勢を大切にしたいと思いつつも、抗えないAIの進化に戸惑いを覚える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、AIをツールとして導入する以上、私たちはこの不安と正しく向き合い、マインドセットをアップデートする必要があります。AIのアウトプットの質は、「使い手の言語化能力と設計力」に依存します。
そのため、根底にあるアーキテクチャ設計やロジック構築のスキルは、今後もエンジニアにとって不可欠な武器であり続けます。AIからの回答を鵜呑みにするのではなく、「思考を深めるための道具」として使いこなす。そうした能動的な姿勢で、本質的なスキルを磨いていくことが重要です。
AIスキルのナレッジシェア
私のチームでは、AIスキルが属人化しないよう、月2回のナレッジシェアやスプリントレトロスペクティブを通じて、チーム全体でAI活用に向き合う時間を大切にしています。
この場では、最新技術のキャッチアップも有効ですが、それ以上に「メンバーそれぞれの使い方」をシェアすることが重要です。一人ひとりの試行錯誤や失敗談は、他メンバーの学びになります。こうした共有を重ねることで、チーム内に「学び合う文化」が自然と醸成されていきます。朝会などの短い時間でも良いので、気軽に共有するのがおすすめです!
効率と品質を両立させる実践的なCursor活用ワークフロー
Cursorは「AI主導の開発」と「人間が仲介して行う開発」のどちらもバランスよく行うことができます。ここでは、どちらの場合でも活用できる、私のチームで実践している内容についてご紹介します。
Project Rules・Commandの設定
まず、AIがプロジェクトに沿った指示内容を理解できるよう、AI自身の回答精度の設定を行います。ある程度条件を絞ることで、AIの推論やアウトプットの質を高めることができます。
そのため、現在のプロジェクト用のルール(Rules)やコマンド(Command)に落とし込むことが重要になります。
使い分けについて
1. Rules (.cursor/rules)
プロジェクト全体で守るべき一貫性のあるルールを指定します。
不要なコンテキストで圧迫しないように、Rulesの適応範囲を決めるのもおすすめです。
例:使用する言語やフレームワークのベストプラクティス、コーディングスタイル、ディレクトリ構成など。
2. Command (.cursor/commands)
チャット欄で「/」を打つとすぐに呼び出すことができます。こちらは繰り返し使う指示の利用におすすめです。
例:APIやコンポーネントなどの雛型作成、リファクタリング、テストケースの追加、コードレビューなど。
即席で作る場合
現時点で最も高性能なモデルを選択し、Planモードでプロジェクト全体のすり合わせを実施します。設計が固まり次第、Agentモードで実装することで、プロジェクトの文脈に沿ったコードを作成することができます。
これらのRulesとCommandを設定しておくことで、新規にプロジェクトに参加したメンバーも、READMEとCursorのRulesを併せて閲覧でき、プロジェクトの概要やコーディングルールを即座に、かつ実践的に把握できるようになります。
実装における指示出しの工夫
環境設定ができたら、次は日々の実装における具体的なアプローチです。私は以下の3つのポイントを意識して使い分けています。
1. モデルとモードの使い分け
タスクの難易度に応じて、コストと精度のバランスを調整します。
通常時
汎用性の高いモデル(Composer1)を使用し、Plan/Agent/Askの各モードを用途通りに使用します。AIに参照させる資料に質問の答えが存在する場合は、こちらを使用しています。AIは答えが明示的にあるため、推論が容易になります。
- コマンドによるテンプレート作成
- 既存コードに対する質問
- 単純なエラーの調査・修正
難しいタスクの場合
推論能力の高いモデル(Claude 4.5 Sonnet・GPT-5.1など)を選択します。特に難しい実装では、Planモードで要件を整理してからAgentモードで実装に移ることで、要件に対するコードの乖離を防ぐことができます。
Planの出力内容が機能やディレクトリを横断するものであれば、出力内容を機能単位でMarkdownに落としこみ、再度Planを実施するのが良いと思います。
- 大規模なリファクタリング
- 新規プロジェクトの要件定義
- エラーの原因特定の調査
※モデルに関しては更新頻度が高いため、その都度用途に合ったものを選択してください。以下のサイトで、ジャンルに応じたスコアのランキングを確認することができます。https://lmarena.ai/leaderboard/
2. トークン消費の抑制
軽量モデルを使用することはもちろん、壁打ちや質問をする際はAskモードで対象範囲を @Files などで明示的に絞り込みます。不要なファイルの読み込みを防ぐことで、トークンを節約することができます。また質問のトピックごとに新規チャットに切り分ける方法もおすすめです。
3. 指示の具体性の調整
- 要件が明確な場合
APIのリクエスト・レスポンスやコンポーネントのpropsなどの構成情報を明示的に与え、テンプレ化したCommandを実行することで、素早く実装することが可能です。 - 要件が曖昧・提案が欲しい場合
まず抽象的な指示から始め、AIの回答を見ながら段階的に具体化していく方法が効果的です。Cursorでは、複数モデルに対して同時に質問することができます。デザインや要件定義のアウトプットの好みを把握したい時に便利です。

AI利用におけるセキュリティ意識
最後に、開発する上で絶対に避けて通れないのが「セキュリティ」の観点です。
AIは開発効率に大きく貢献してくれます。最近ではAIエディタだけでなく、AIブラウザやMCP(Model Context Protocol)といった新しい技術の登場により、開発体験はますます魅力的なものになっています。しかし、こうした新技術の恩恵を受ける一方で、それを悪用する攻撃者が存在することも忘れてはなりません。
まずは、具体的にどのようなリスクが私たちの開発環境を狙っているのか、その手口を知ることから始めましょう。
想定される攻撃手法の例
- ゼロデイ攻撃:修正プログラムが公開される前の脆弱性を狙う攻撃。
- プロンプトインジェクション:AIに対して意図的に不正な指示を与え、情報の持ち出しや不適切な出力を誘発させる攻撃。
- ポイズニング:攻撃者が用意した悪意あるWebサイトやデータをAIに学習・参照させることで、誤作動を引き起こす手法。
- タイポスクワッティング:正規のパッケージ名やサーバー名に酷似した名称(タイプミスしやすい文字列など)を用い、誤って悪意あるものをインストール・接続させる攻撃。
こうした脅威に対して、私たちはよりセキュリティ意識を高める必要があります。
AIを利用する上で意識すべき防衛策
- アプリケーションは常に最新バージョンにアップデートする。
- 信頼できるリソースのみを扱い、最小権限の原則を意識する。
- AIにプロジェクトの重要な情報は隔離させる。(認証情報・社外秘の情報など)
- 提案されたコマンドは注意深く確認し、不安なものは実行しない。
新しいツールや技術を導入する際は、プロジェクトのセキュリティレベルに合わせた体制が取れることを確認するのが大切です。安全に開発できる環境を整えていきましょう。
最後に
今回は、Cursorを中心に実務で活用するための基盤づくりについて、心理面・組織面・技術面・セキュリティ面の4つの観点からご紹介しました。
紹介した内容は、私たちのチームでの一例です。AI活用ではまだ試行錯誤中ですが、「多くのチームが抱える課題」と「プロジェクト固有の課題」を見極めることが大切だと感じています。効率化のボトルネックやプロンプトエンジニアリングの属人化といった共通課題は、いずれ誰もが使える解決策が出てくると思います。だからこそ、自分たちのプロジェクトならではの課題に向き合うことが、より本質的な価値提供につながると考えています。
まずは、チーム内で話し合う場を作り、AI活用含め少しずつ最適なワークフローを見つけていきましょう。
この記事が皆さんのAI活用を考えるきっかけになれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
Cursor公式ドキュメント
https://cursor.com/ja/docs
Cursorルール・コマンド例
https://cursor.directory/
https://github.com/kinopeee/cursorrules※外部のルールを使用する際は、内容に不審な指示が無いか十分に確認してください。
MCP関連
https://modelcontextprotocol.io/docs/getting-started/intro
https://speakerdeck.com/minorun365/yasasiimcpru-men
https://blog.cloudnative.co.jp/27994/#co-index-0
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