「作ったものを渡すだけ」からの脱却!UI/UXデザインと開発の“断絶”を埋める「土の香り」について【BEMAレポート】
「考える人」と「作る人」を分断しない。UI/UXデザインと開発の協業プロセス
こんにちは、BEMA Lab編集部の濱松です!
2026年2月16日、UI/UXデザイナーとエンジニアの「共業」(協業)をテーマにした「BEMAトーク」を開催しました。
「デザインが決まってからエンジニアに降りてくる…。」
「実装上の懸念があるけど、もう決まってるから言い出せない…。」
そんな職種の壁に、心当たりのある方も多いのではないでしょうか?
今回のイベントでは、UXデザイナーの羽山祥樹さんをお招きして、メンバーズのUXデザイナー・酒井、スクラムマスター・小島が登壇。Miroを使いながら、参加者も交えたクロストーク形式で議論が進みました。
議論を追っていくと、ひとつの印象的なキーワードにたどり着きました。イベント当日のクロストークの様子をレポートします。
クロストークのファシリテーター・小島さん
① なぜ上手く協業できない?「分業」が生む断絶
クロストークのはじめに、小島さんから「バケツリレー型」の分業構造が、デザイナーとエンジニアの断絶を生んでしまうのではないか?という問題提起があり、そこから話が始まりました。
デザイナーが設計を固めて開発へ渡し、エンジニアは仕様通りに実装する。
それぞれが専門性を発揮している一方で、お互いの領域の専門家同士が影響し合う機会が少ない。デザイナーからエンジニアへ成果物を渡すだけの分業構造に、小島さんは「もったいなさ」を感じていると語りました。
その“もったいなさ”の背景には、「時間的余白のなさ」があるのではないかと酒井さんは考えていました。時間的余白がないことで、企画段階での背景や妥協点が十分に共有されないまま、「これでお願いします」と渡される構図がある。
エンジニアからの建設的な提案があっても、議論する時間がなく活かされない。そうした状況が、もったいなさや分断を生んでいるのではないか、という話でした。
参加者からもたくさんの声が寄せられました。
「ユーザー理解をしているプロジェクトに参加したことないですね。」
「モチベはあるけれど、自然とコードだけ書くエンジニアみたいになってる人がここに…。」
「現場を離れて時間が経つと、どこかで『言葉が通じないかも』と先回りしてしまい、実際あまり話してなかったこともありました。」
【編集部ボイス(濱松)】
分業そのものが悪いとは思っていませんが、成果物だけがリレーされて「なぜそうなったのか」という思考や葛藤が共有されないことは、わりとよくある気がしています。
デザインデータはちゃんと渡される。でも、その裏でどんな迷いがあったのか、どこで妥協したのかまでは、なかなかわからない。
「背景や葛藤が共有されない状態」が続くと、チームで協力しているというより、単なる“受発注”の関係に近づいてしまっているのではないかとも感じます。
② ユーザー理解の解像度が「断絶」を埋める
使いやすいプロダクトをつくる専門家・羽山さん
では、その断絶を埋めるには何が必要なのでしょうか。
羽山さんが挙げたのは、「ユーザー理解の解像度」でした。
「PO(プロダクトオーナー)だけがユーザーを理解し、他のメンバーが十分に共有できていない場合、どうしても『言われたものを作る』構造になってしまう」といいます。
この場で紹介されたのは、Yahoo!知恵袋に投稿された介護用品に関する実際の相談。
数字では見えない、生々しい感情や切実な現場の声がありました。
羽山さんは問いかけます。
「Google Analyticsなどのサマリー数字だけで、ユーザーを理解した気になっていませんか?」
「生のユーザーに触れること。 息づかいある感情にひとつひとつ触れて、そこに人間がいるのだと実感すること。人間の肌ざわりがあって、はじめてよいプロダクトがつくれます。KJ法® の川喜田二郎先生はこれを『土の香り』と表現しました。」
一方で、小島さんからは「エンジニアは“どう作るか”に関心が向きがちで、ユーザー接点のハードルが高いのでは」という現場視点の問いも。
参加者からも「エンジニアが『土の香り』を感じることって難しそう…。」という本音がこぼれましたが、酒井さんは職種を問わず、ユーザーに触れる経験の重要性を提案します。
「30分でもいいから、ユーザーの話を直接聞く」
「資料だけで受け取るのではなく、チーム全体で体験することが大事」
【編集部ボイス(濱松)】
整ったレポートや数値データではなく、生活の中からこぼれ落ちてきたような生の言葉に触れた瞬間、「ああ、これが“土の香り”なんだ」と腑に落ちました。
ユーザー理解とは、情報を受け取るだけでなく、少しだけ別の世界に足を踏み入れてみることかもしれません。
UXデザイナー・酒井さん
③ 「評価されないから」をどう乗り越えるか?
終盤では、より踏み込んだテーマへ。
「ユーザー理解はエンジニアの評価に含まれない」という現実です。
羽山さんの「組織によっては、そもそもエンジニアがユーザー理解をしても、評価制度に含まれないこともあります」という提示に、会場の空気が一瞬引き締まります。
酒井さんは、評価制度に課題があることを認めつつも、こう語ります。
「良いものを作ることにコミットしたほうが、結果的に評価につながる。」
評価制度は多くの場合、役割内での成果やアウトプットを測ります。一方で、ユーザー理解のための対話や越境的な動きは、どうしても可視化しづらい。
酒井さんの「良いものを作ることにコミットしたほうが、結果的に評価につながる」という言葉に対し、参加者からは「評価というよりは、後から価値になりますね」と応じる声もありました。
評価にとらわれるのではなく、“いいものをつくる”という軸を持ち続けること。
その大切さを、参加者同士が静かに確かめ合うような時間となりました。
④ UXデザイナーは「チームを変える」影響力を持つこと
最後に話題となったのは、UXデザイナーの役割。
羽山さんは言います。
「UXデザイナーは一人でモノを作れない職種です。ユーザーを理解することがゴールではない。ユーザーの本当の姿をエンジニアに伝えてコードにしてもらう。UIデザイナーに伝えて画面にしてもらう。営業やCS(カスタマーサポート)に伝える。そうして、はじめてプロダクトがユーザーに価値あるものとして届きます。だからこそ、UXデザイナーの役割とは、チームに影響をもたらし、チームの動きを変えていくことです。」
リサーチ結果を渡すだけでなく、チーム全体が“ユーザー中心”で動けるよう働きかける。
チーム全体をユーザー中心に動かそうとする姿勢こそが、UXデザイナーの価値を高めるというメッセージでした。
編集部まとめ:職種を超えて「土の香り」を嗅ぎに行こう
「良いプロダクトは、良いチーム(関係性)から生まれる」
今回のBEMAトークで改めて感じました。
私が新卒で所属していたWebサイト運用チームでは、制作拠点とお客様対応の現場が分かれ、クライアントやユーザーの声に触れる機会はほとんどありませんでした。
今回の議論を聞きながら、「あのとき、もう少し踏み込めたかも」と少しだけ当時の自分を思い出しました。
正直に言うと、「それは自分の役割ではない」と線を引いてしまった瞬間もありました。でもそれも、目の前の仕事に向き合っていたことだったと思います。
だからこそ今は、役割を守ることと同じくらい、一歩踏み出す勇気も大切。
職種を越えて同じユーザーの声に触れることが、チームの空気を少しずつ変えていくのかもしれません。
私たち編集部も、そうした問いを忘れずに歩んでいきたいと思います。
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