最先端の生成AIトレンドから先読みする これからの生成AIエンジニアに求められるスキルセット大解剖
はじめに
こんにちは!BEMA Lab編集部の橋本です。
“開発者体験” をテーマに、その知見・経験の共有とそれに関わる方々のコミュニケーションを目的とした、日本CTO協会主催のカンファレンス「Developer eXperience Day 2024」が7月16日から7月17日の2日間にわたって開催されました。
本レポートでは、これからの生成AIエンジニアに求められるスキルセット大解剖として、最先端の生成AIトレンドのリアル、各社の動きを基に、日本国内でAIを構築していくエンジニアに求められるスキルの変容や方向性についてディスカッションされた内容をご紹介します。
登壇者はこちらの方々です!
■株式会社ギブリー/新田 章太
取締役 Givery AI Lab / HRTech部門 管掌
■株式会社ギブリー/森重 真純
Givery AIラボ 技術パートナー
アメリカ出張から見えた生成AIトレンド
シアトルでの海外出張中、Microsoft Build 2024(以下、MSBuild)に参加されたお二人から、現地で目にした最先端の生成AIトレンドについて、お話しいただきました。
新田 章太(以下、新田氏):実際に、MSBuildに現地のシアトルにて参加しました。
真純さんは2週間ほど滞在されていましたが、シアトルの出張はいかがでしたか?
森重 真純(以下、森重氏):最も驚いたのは日本とアメリカの常識、世界観の違いで、宿に向かう途中にAnthropicの大きな広告が見えて、アメリカ側はClaudeに染まっていることを感じ、常識がアップデートされていることに衝撃を受けました。
新田氏:Microsoftのオフィス周辺で”AIの新しい時代”(日本語で)という旗が多く見られ、周辺一体となってAIで世の中変えていくことが推進されている力強さが感じられました。
開発のトレンドについて、現地のセッションやレポートから掻い摘んで皆様にお伝えしたいと思います。
生成AIの最新トピックス
はじめに、カンファレンス内で共有されたMicrosoft社が提供しているコンセプトムービーを紹介いただき、生成AIの最新トピックスについてお話しいただきました。
新田氏:Microsoft Build 2024(以下、MSBuild)のカンファレンスでは、「ジェネレーティブAI」よりも「Copilot」という言葉が頻繁に使用されており、生成AIソフトウェアの近未来は、個人やチームを共にクリエイティブにするチームメンバーのような存在になるということを強く発信されていました。Microsoft社が提供しているコンセプトムービーからもわかります。
1.AIケイパビリティの向上
Copilotと生成AIは全く異なるものであり、生成AIをどれだけルールベースのロジックと結びつけるかが重要になります。
今後、AIのケイパビリティが向上する中で、AIはCopilotのようなソフトウェアの主要な一部として、多様なデータセットやアプリケーションに存在し、データの活用において重要な役割を果たすことになります。
生成AIを繋ぎ合わせて利用することが、データ活用の鍵となるとお話しいただきました。
2.LLMからSLMへ
LLM(大規模言語モデル)からより業界に特化したデバイスで動いていくSLM(小規模言語モデル)や、プライベート環境におけるセキュアなSLMの開発が注目されています。
3.MaaSとLLMOps
AIモデルを一から作る時代から、選び、評価し、選択し、運用していく時代へと移行しており、さまざまな企業が制度や回答速度の改善に着手し、生成AIの体験がさらに向上しています。各社は統合管理ツールを導入しており、AWSとAzureを並行して開発する大企業も現れてきました。
新田氏:各社で統合管理ツールが出ていますが、どう思いますか?
森重氏:クラウドのベンダーの人たちもユーザーを握りたいというか、一度統合AIスタジオやベットロックなどの運用を始めると、さらにデータが蓄積されるようになり、基本的にそこを抑えにいくべきというふうな布石を売っているのが自分の見解です。
新田氏:併用して使い分けするのが良いかもしれないですね。
選び、運用し、改善するという時代に変化していることがわかります。
AIエンジニアリングにおける開発者体験の重要なトピックとして、3つのポイントを紹介しました。
1.生成AIとルールベースロジックの統合、
2.LLMからSLMへの進化
3.AIモデルの選択と運用の新しい時代に移行する現状
と、ここまでAIエンジニアリングの最新トレンドが紹介されました。
生成AIは、ハルシネーションを避けつつマルチターンの会話が可能になったことで、単なる情報収集ツールから、人間とは異なる視点で業務をサポートする役割を持つように進化していることが言えます。
さらに、生成AIの「ありモノ」化が進む中で、いかに構築するかでなく、特徴を把握し適切に選定する能力が求められています。これは現在のSaaSツールの流れと近しいように感じました。
生成AI構築手法の進化
次に、先ほどの紹介いただいたトピックに対して、エンジニアの方々が開発に関わっていく中で、どのようなスキルセットや技術が求められていくかについてお話しいただきました。
自然言語を用いる対話型AIにおいて、精度の高いアウトプットを得るための技術です。
自然言語でプロンプトを記述する際、以下の4つの要素を加えることで、より高精度な回答が得られるとされています。
・指示 Instruction
・背景 Context
・入力 Input
・出力指示 Output
新田氏から、プロンプトエンジニアリング技術の発展に伴い、精度を上げていくには以下2つの考え方を抑えることが重要だと言及されました。
1.会話を連続していく中で精度をあげていく
2.外部のデータベース、情報を与える
上記を踏まえ、生成AIの進化に伴うエンジニアの役割についてお話しされました。
新田氏:APIベースでソフトウェアのようにAIを扱える時代がもう到来しています。
そして、単体でAIを使用するのではなく、あらゆるデータ基盤を組み合わせてユーザー体験を作っていき、モデル運用や構築するだけでは成果が出ないという状況では意味がありません。
精度を上げるための部分をAIエンジニアリングとして考えていくことが必要となります。
森重氏:エンジニアが生成AIを活用する上で今後必要なのは、クリティカルシンキングだと考えています。生成してきたものに対して弱点や欠点を見つけ出すことが重要になります。
これからAI活用人材に求められるスキルセットとは
AIの活用人材のレベルを3つに分類し、各レベルのスキルセットをまとめたものからご説明していただきました。
LEVEL1 全てのAI利用者
すべてのAI利用者に必要なデジタルスキルは、標準的な基礎力に集約されます。
基本的なデジタルリテラシーを理解し、いかに最短距離で必要な情報を取得するか、論理的思考が重要です。(下記の)スキル部分が特に重要であり、エンジニアには考える思考力と試す思考力の両方が必要だと話されました。
LEVEL2 プロンプトエンジニア
元来の機械学習(強化学習)に必要なスキルセットに加え 検索アルゴリズム・インフラ・ハードウェアに関する知識 が求められます。
根本的なコンピュータサイエンス的な理解をするのが重要となり、コードを書くだけでなく、チームで開発を進行する上で、業務設計力やプログラミング思考が非常に重要になると述べられました。
新田氏:生成AIに対する高い期待値から、アイデア豊かになっているケースや、入れたけど意味ないといった現状としてある中で、いかに解決策としてのAIを構築していくかが重要になると思いますがいかがですか。
森重氏:自分もそう思います。よくDX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くが、本質的にはBX(ビジネストランスフォーメーション)の方に焦点を当てるべきで、常に意識し続けることが大事だと思います。
LEVEL3 AIエンジニア
元来䛾機械学習(強化学習)に必要なスキルセットに加え 検索アルゴリズム・インフラ・ハードウェア知識 が求められるとお話しされました。
新田氏:技術セットがより一層求められると思いますが、ここに関してもいかがでしょうか。
森重氏:ここはまさに、見る指標が精度や学習回数など調整する変数をみて精度を改善していくのが強みである、データサイエンティストの方が活躍できるレイヤーになると思います。
生成AIの進化に伴い、AIエンジニアに求められるスキルセットも変化しています。
今後のAIエンジニアには、デジタルリテラシーの向上や業務設計力の強化が求められます。
AI利用者に必要なデジタルスキルは今後の社会で需要が高まると思われるため、今のうちに習得しておくことは非常に有益だと感じました。
最後に
本講義で、生成AIエンジニアリングの未来について学び、プロンプトエンジニアリング、ソフトウェアエンジニアリング、AIエンジニアリングの融合が重要であることが強調されました。
特に森重氏の「みんなで生成AIの業界に飛び込もう」というメッセージは印象的で、生成AIの可能性を追求し業界を盛り上げたいという意欲が伝わりました。
また、MSBuildのカンファレンスでは「Copilot」という言葉が多用され、生成AIの新しい役割が示されていたことや、これからのエンジニアに求められるスキルセットについても多くの知見が共有され、デジタルリテラシーの基礎から高度な技術までが求められることが明確になりました。
生成AIの未来に向けて、知識を深め、スキルを磨いていきたいです。
貴重な講演に参加させていただきありがとうございました!
この記事を書いた人
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