スクラムマスターがふりかえる、2024年に試したふりかえり手法まとめ
この記事は「BEMALab アドベントカレンダー 2024」25日目の記事です。
はじめに
こんにちは!そしてメリークリスマス!
メンバーズでスクラムマスターをしています、大和です。
計らずして、クリスマス当日を務めることになりました。
「何かすごい記事を書かなきゃいけないのでは!?」と勝手にプレッシャーを感じていたのですが、さりとて書けることしか書けぬ!......ということで、スクラムマスターとして今年力を入れてきたことを愚直に書いていこうと思います。
私の場合、その対象は「ふりかえり」になります。
この一年、多くのチームと100回以上のふりかえりを行い、千差万別の状況の中でさまざまなふりかえり手法を試してきました。
めでたくカイゼンに繋がったものや、消化不良に終わったもの、チームに笑いが溢れたもの......本当に色々なふりかえりがありました。
それらの実践から得られた経験・学びを、皆さんへのクリスマスプレゼントとして書いていけたらと思います。
2024年のふりかえりについて
<ふりかえった回数は?>
記憶と記録を辿れるだけ辿って、今年どのくらいふりかえりをやってきたのかをカウントしてみました。
所属するスクラムマスターチームや、支援先チーム、各種イベント、ワークショップ後など、大小合わせて約120回ほどふりかえりを実施していたようです。営業日で見ると、2日に一回はふりかえりをしていた計算になりますね。
<ふりかえりの環境は?>
弊社メンバーズは、日本全国にメンバーが分散しており、ほとんどのふりかえりをオンラインで実施していました。
Google MeetやMicrosoft Teamsで顔を合わせ、MiroやBox Canvasなどのオンラインホワイトボードを使って付箋をペタペタ......という進め方が主流でしたね。
<どう取り組んだ?>
より良いふりかえりをするためには、状況に応じて切れる「手札」を増やすことが重要!そう考え、とにかく様々なふりかえり手法を試すことに力を入れていました。
同時に、社内にもっとふりかえりの楽しさ、奥深さを広めたいという思いもありました。メンバーズでも、ふりかえりは既に一般的な取り組みになっています。ただ、KPT以外の手法を知らなかったり、ふりかえりをうまく活かせない、楽しくふりかえれていないチームがまだまだあるのが実情です。そうした状況を、少なくとも私が関わるチームに関しては改善していきたいと考えていました。
結果として、今年は約35種類ほどのふりかえり手法・フレームワークを試すことができました。確かに、一月に2,3は新しい手法を試していたような気がしますね。
手法の仕入れ先としては、ふりかえりエバンジェリストの森一樹さんが公開されている「ふりかえりカタログ(コミュニティ版)」をとても重宝していました。(いつも大変お世話になっています!!!)
印象深かったふりかえり手法 in 2024
ここからは、実際に試してみた手法のうち、特に印象深かったものについてふりかえっていこうと思います。
チームストーリー(過去/未来)
<どんな手法?>
(過去)
1. ふりかえる期間の中で起きた「事実」を付箋に書き、時系列順に貼って共有する
2 .これからも「続けること」を1の近くに貼り、共有する
3. これから「避けること」を1の近くに貼り、共有する
4. チームのコミュニケーション、協力したことを書き、2、3の近くに貼り、共有する
(未来)
1. ホワイトボードの横軸を時間軸に、右上に未来(ありたい姿)を書いて共有する
2. 現在地(変化の兆候や現在の状況)を左下に書いて共有する
3. 崖(2→1に向かう中での阻害要因)を書いて共有する
4. 脱出(3の打開策)を書いて共有する
5. 加速装置(1への加速要因)を書いて共有する
時系列を意識しながら、過去/未来それぞれに思いを馳せるふりかえり手法です。
(過去)はチームの状況や現在地の分析に、(未来)はチームの向き直りや軌道修正に有用!という印象ですね。
<やってみてどうだった?>
下期の初め、所属するスクラムマスターチームの合宿で使用しました。珍しくオフラインでの実施!チームとして初の合宿だったこともあり、がっつり時間をとって、ほぼ一日がかりで振り返りを行いました。
まず(過去)を使ったふりかえりから始めたのですが、これまでのチーム、そしてチームを取り巻く環境を俯瞰して見られたのがすごく良い体験でしたね。また(未来)の方では、自分達が目指すべき目標はどこにあるのか、そこに向かうために何をするのか、していきたいのかなど、話しているうちにワクワクしてくるような場になったのが印象的でした。
最終的に、次の半期の目標と活動方針、共通認識をチームで定めることができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
どちらの手法も、1週間毎にというよりは、3ヶ月、半年といった長期間のふりかえりに向いているような印象でした。定期的に繰り返し実施することで、より効果を発揮できる手法だと思います。
Norm Kerthの最優先指令
<どんな手法?>
- ふりかえりを始める前に、上記の文章を全員で読み上げます
- 文章の内容に賛同できるかを参加者全員に問い、合意を得ます
「色々辛いこともあったけど、私たちは互いにベストを尽くしてきたよね」と、ふりかえり前に皆で合意する。そうすることで、たとえ辛いことがあった時期でも、ふりかえり前に皆が顔を上げることができる。そんなふりかえりの「場づくり」に役立つ手法が、このNorm Kerthの最優先指令です。
<やってみてどうだった?>
「開発が思うようにいかず、メンバーの関係性がギクシャクしているチーム」のふりかえり支援で実践してみました。
メンバーが普段思っていることを吐き出して欲しいという場でもあったため、オリジナルの文言に「また、この会における〜」の一文を追加して実施。結果、お葬式ムードが生まれることもなく、むしろ未来を見据えた前向きなふりかえりをすることができました。
ふりかえりにおける場づくり、やはり重要だな〜と強く実感しましたね。
ただオンラインだと皆で読み上げるのが非常に難しい!
そのため次からは「代表者が読み上げ、他のメンバーは文章を目で追う」形式で実施していました。また文言に関しては、皆で事前に設定したグランドルール等を読み上げるなどしても良さそうに感じました。
かなり効果を感じた手法なので、今後も普段のふりかえりから積極的に用いて行きたいなと思ってます。
DPA
<どんな手法?>
こちらもふりかえりの場づくりに使う手法ですね
- どんな雰囲気でふりかえりたいかを付箋に書き出して共有する
- 全員が合意できる内容を選ぶ
- その雰囲気を醸すためにどんなことをやる?を付箋に出して共有する
- 全員が行動できる内容を選び、それに沿ったふりかえりを行う
「どんな場にするか」を自分たちで決め、実施する事で、ふりかえりへの集中やポジティブな姿勢を生み出すことができます。
<やってみてどうだった?>
こちらの手法ですが、実はふりかえりではなく、あるミーティングのカイゼン活動の中で使用しました。
現在私が所属する部署では、各案件のチームリーダーたちの定例会議が開かれています。「マネージャーとの1対1の状況確認」が中心になっており、参加者同士の交流が起きにくい。「各チームの代表が集まる」という貴重な場のわりに、あまり価値を感じられる場になっていなかったのです。ただ、話を聞くと、リーダー達にも「もっと有意義な時間にしたい」という思いはある。そこでこのDPAを使って、会の進め方や内容を「自分たちで決めよう」という提案をしました。どんな雰囲気で、どんなことをやっていきたいかを皆で話し合い、結果として会のグランドルールや実施内容を決めることができました。現在はリーダー達が「悩みや知見、気になったこと等を共有できる場」として会を活用できています。
こうした会の改善は、トップダウンで「こうしよう」と降ろした方が圧倒的に早く楽だとは思います。が、そうなるとどうしても出てしまう「やらされ感」。経験から言うと、そうした活動への参加って前のめりになりにくく、なかなか続かないんですよね。そうではなく、メンバー同士で丁寧に話し合い「自分達で決め、自分たちでやる」。そうする事で生まれる「自主性」や「当事者意識」には、「やらされ感」にはない圧倒的な価値があるなと強く感じました。
ふりかえりに限らず、人々が集まって話す場では場づくりがとっても大事!(重なる学び)
会のメンバーは定期的に入れ替わるため、ふりかえり同様、定期的に実施できるとより良さそうだと考えています。
Fun/Done/Learn
<どんな手法?>
- ワイトボード等に三つの円のベン図を作成し、それぞれの円にFun(楽しかったこと),Done(やったこと), Learn(学んだこと)のラベルを貼る
- Fun,Done,Learnそれぞれを付箋に書いて貼り付け、共有する
- ベン図全体を眺め、傾向や気づいたこと、今後やりたいこと等を話す。
<やってみてどうだった?>
まぎれもなく、今年最も使用頻度が高かったふりかえり手法です。
「円を三つ描くだけ」という単純な前準備から、シンプルかつ前向きにふりかえれる点が非常に気に入っています。
今年は社内アジャイルコミュニティーのイベント運営にも力を入れていたのですが、その都度ライトに実施して、どんな「学び」や「楽しさ」があったかをふりかえるのに重宝していました。貼られた付箋のバランスや傾向から「どんな場だったか」をふりかえることもできるので、「ふりかえりのふりかえり」にもよく使った気がします。
対して、アクションを引き出すことに長けた手法ではないため、それが強く求められる場面ではあまり向かないという学びもありました。ただ「シンプルかつ前向きにふりかえれる」という特性は、カイゼンのアイデアを出し合うのにとても有用!ふりかえりカタログで述べられているように、別の手法(例えば「ありたい姿」とか)に繋ぐことで、更なる活用ができそうだと感じています。
焼肉レトロスペクティブ
<どんな手法?>
ふりかえりを楽しい楽しい焼肉になぞらえて実施するふりかえり手法です!
- 「焼肉の楽しそうな画像」をホワイトボードに大きくドーンと貼り出す
- スプリント中の出来事を「チームで焼肉をしている状況」に例えながら付箋に書き出す(それ以外のことは書かない)
- チームで付箋の内容を紹介しあい、会話する
上記を改変したり、ルールを追加したりしてもOK!
ちなみに「焼肉に例えて付箋を書く」はこんな感じです。
- 肉を注文し過ぎた => タスクをとりすぎた
- 肉を焼き過ぎた => 不要な作り込みをしてしまった
- いっぱい食べたが、どれも安い肉だった => 見積りより軽いタスクが多かった
<やってみてどうだった?>
今年最も楽しく、有意義だったふりかえり手法を教えてと言われれば、私はこの焼肉レトロスペクティブを真っ先に挙げます!
メタファーを使用したふりかえり手法の楽しさ、有用性を、これでもかというくらい教えてくれた手法ですね。この手法をきっかけに「回転寿司レトロスペクティブ」「BLEACHレトロスペクティブ」など、チーム独自のふりかえり手法を作るというという稀有な経験もできました。とても多くの学びを与えてくれた、大変思い出深いふりかえり手法です。
詳しい内容は別記事に書いていますので、こちらもぜひご覧ください!
さいごに
以上、今年実践したふりかえりのふりかえりでした!
実は各手法についてYWT(やったこと、わかったこと、次やること)の形式を意識して書いていたのですが、気づかれていましたでしょうか?
数多くのふりかえりを実践したことで、全体として以下のような学びがありました。
- ふりかえり、事前の場づくりがめちゃめちゃ大事
- 試した手法の数だけ、チームが多様な視点・気づきを得ることができる
特に2つ目が大きかったですね。「ふりかえりにどんな手法を選ぶか」は、「立ち止まったチームにどんな ”問い” を投げるのか」と言い換えられると思います。その問いを案内役に、チームは過去をふりかえり、より良い明日に向けて思考を巡らせることができる……と、今年1年を通してそんなふうに考えるようになりました。
チームにとって必要な問いは、チーム毎に、またタイミング毎に異なるはずです。だからこそ、その場その場で最適なふりかえりができることの価値は大きい!来年も引き続き様々な手法を試しつつ、チームの状況に応じて適切なふりかえりを提案できるようになっていきたいですね。そのための観察力や判断力も鍛えたい!
他にも記事に書きたかった手法がまだ10個くらいあったのですが、文量の関係で今回はここまで。またどこかで記事にできたらと思います。
それでは、皆さん良い年末をお過ごしください!
この記事を書いた人
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