チームで「焼肉レトロスペクティブ」をやってみたら、回転寿司で「卍解!」することになった話(前編)
はじめに
こんにちは!メンバーズでスクラムマスターをしています、大和です。
いきなりですが、皆さん「ふりかえり」やってますか?
この記事にアクセスしてくれたということは、少なからず興味や経験がある、もしくはまさに今実践している最中だ、という方が多いのではないでしょうか。
そんな皆さんに1つ質問です。ふりかえりの手法、何を使っていますか?
ある日、所属するスクラムマスターチームの中で焼肉レトロスペクティブなる新しいふりかえり手法が共有されました。
「なんて面白そうなふりかえりなんだ!」とテンションが上がり、早速、支援先のスクラムチームに紹介!「うちでもやろうぜ!」と実際にやってみることに!
これが予想以上に楽しく、そして面白い!
今回は、そんな焼肉レトロスペクティブの体験談と、そこから波及して、チームが自分達でふりかえりを作るまでになった話を書いていこうと思います。
より効果的なふりかえり、楽しいふりかえりをしたい全ての人にお勧めしたい内容になっていますので、ぜひご覧ください!
焼肉レトロスペクティブとは
Zuzi Sochova 氏(書籍「The Great ScrumMaster (邦訳 ScrumMaster the Book)」の著者)が講師を担当するA-CSM(アドバンスド認定スクラムマスター)研修の中で、受講者の方が新たに生み出された楽しいふりかえりの手法です。
原点の記事はこちら!
RSGT2024でのセッションもあります!
<スライド>
焼肉レトロスペクティブのやり方
焼肉レトロスペクティブのやり方は超簡単!以下の3つを守るだけです。
1. 「焼肉の楽しそうな画像」をホワイトボード(やそれに相当するもの)に大きくドーンと貼り出す
2. スプリント中の出来事を「チームで焼肉をしている状況」に例えながら付箋に書き出す(それ以外のことは書かない)
3. チームで付箋の内容を紹介しあい、会話する
以上!!!ね?簡単でしょう?
「焼肉をわいわい楽しむのに、細かいルールなんて不要!!」という考えから、必要最低限のルールしか定められていません。
それ以外はチームがやりたいように、自由な工夫と改変が可能です。面白いですね!
ちなみに「焼肉に例えて付箋を書く」は、こんな感じです!
- タスクをとりすぎた => 肉を注文し過ぎた
- 肉を焼き過ぎた => 不要な作り込みをしてしまった
- いっぱい食べたが、どれも安い肉だった => 見積りより軽いタスクが多かった
今こそ、チームのメタファー力が試される!
大事なのは "遊び心を持って、ふりかえりを楽しむこと"。これが焼肉レトロスペクティブの真髄です。
※焼肉レトロスペクティブを楽しく学べる動画もあります!ぜひ見てみてください!
実際にやってみた
上記の基本ルールを踏襲しつつ、チームでは以下のような進め方で実施してみました。
<進め方>
- スプリントの出来事を焼肉に例える
- スプリント中に起きたことを焼肉に例えながら付箋に書き出す(事前記入もOK)
- ふりかえりの開始「いただきます!」
- ふりかえりを始める際は、チーム全員で「いただきます!」と言ってスタートする
- 付箋の内容をクイズ形式で紹介
- 気になった付箋をチームで取り上げ、記入者が付箋の内容を紹介する
- この時、何について書いているのかをクイズ形式でチームに問いかける(任意)
- チームで会話
- 付箋に記入した内容についてチームで話し合う
- 必要に応じて付箋にメモをとる
- 時間の許す限り焼肉をたのしむ!
- Enjoy!焼肉レトロスペクティブ!
- 改善点/Nextアクションの決定
- 話し合った内容を深掘り、次のスプリントから実施できる改善アクションを決める
- ふりかえりの終了「ごちそうさまでした!」
- ふりかえりを終える時は、皆で「ごちそうさまでした!」と言う
- 二次会の実施(任意)
- 二次会という名の「ふりかえりのふりかえり」を実施
- 感想や次回よりよく行うためのアイデアを出し合う
※チームで追加したルールは太字で示してあります。
実際にチームメンバーに付箋を記入してもらった後のホワイトボードはこんな感じに!
これだけだと、チームに何があったのか全然分かりませんね!
ここから皆で各付箋について話していくのですが、このチームでは各々が何を書いたかをクイズ形式で発表しました。(これがまた楽しい)
その後、話した中から何か改善できそうなものがないか検討し、実行可能なアクションを決定!最後に二次会と称したふりかえりのふりかえりを実施し、焼肉レトロ自体のふりかえりまで実施することができました。
焼肉レトロの良かったところ・難しかったところ
焼肉レトロスペクティブを実際にやってみて感じたのは、その圧倒的な楽しさです!
メタファーを駆使して付箋を書いたり、クイズ形式で内容を発表したり......普段の業務とは少し違う雰囲気の中で、まるで本当の焼肉会のように皆で"わいわい"できる!
すると自然とコミュニケーションが活発になって、改善のためのアイデアや前向きな意見がどんどん出てくるのですよね。
少し進め方に慣れてくると、付箋以外の対話の中でも自然とメタファーを使うようになって、それがまた面白い!
ふりかえりが、いわゆる「大反省会」や「お葬式会場」みたいになってしまうチームもあると聞く中で、この「圧倒的な楽しさ」は、そうした状況を打破する良薬になるのではと強く感じました。
また「メタファーによる表現」って「対象を客観的に捉え、特徴を抽出し、別の似た性質の物事に例える」というかなり高度な手法だと思うのですが、焼肉レトロでは付箋を書く過程でこれを強制されるんですよね。
すると何が良いか!
- 各々が、チームやプロダクトの現状、チームを取り巻く状況について客観的に見る機会になる
- メタファーを考える上で、対象の本質について考える or 捉え直すことができる
- 焼肉という共通のイメージを通して各々の言葉が表現力豊かに伝わり、共感や理解を深めてくれる
- 「例え話」という体で、普段、直接的な表現ではなかなか言えないような内容も持ち出すことができる
......え、すごくない?すごいよね?すごい。
熱気球など、メタファーを使用したふりかえり手法は他にもいくつかありますが、焼肉レトロはその効果が特に顕著に現れるなと感じました。
対して、難しかったところとしては
- メタファーを考えるのが難しい(要: 表現力とメタファー力)
- 具体的な改善アクションを決めるのが難しい(話すだけで終わってしまいがち)
以上が挙げられます。
メタファーを考えるのが難しいのは上述の通りなので、ここは慣れが必要なのかなと思います。ただ翻って言えば、焼肉レトロは「表現力」や「物事の本質を見極める力」の練習にもなる手法なのかなと!
また、改善アクションを出すという観点では、焼肉レトロにはそのプロセスがそもそも設定されていません。ここは他の手法を組み合わせるか、独自に設定プロセスを作ってしまうのも楽しいですね!
今回のチームでは改善アクションを「お土産」と表現して「お土産どうしましょ?」という切り口で話し合ったりしてました。
焼肉レトロスペクティブのまとめ
焼肉レトロスペクティブを実際に体験してみて、これは「遊び心満載の場づくりを自然と行える、とても優れたふりかえり手法」だと感じました。掛け値なしで「オススメ!」と言える手法ですので、皆さんのチームでもぜひ一度実践してみてください!
さて、前半となる当記事はここまでになります。後半では、焼肉レトロを経て、チームが独自のふりかえり手法を作り出したお話をしていきます。ぜひぜひ、そちらも読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、また!
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