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スクラムマスターが語るKPTの課題、なぜKeepからTryが出ない?#2 Keepを「探究」する4Dサイクルの問いかけガイド

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はじめに

こんにちは!メンバーズでスクラムマスターをしている大和です!

この記事は、連載「スクラムマスターが語るKPTの課題、なぜKeepからTryが出ない?」の第二回になります。

前回は、Appreciative Inquiryという考え方を参考にしながら、 Keepは「継続するもの」であり、同時に「探究するもの」でもあるという話を書きました。

そして、その探究を進める方法として、

  • Discovery:何が上手くいっているのかを発見する

  • Dream:その良さがもっと発揮された未来を考える

  • Design:その未来に近づくための方法を考える

  • Destiny:実際に動き、試しながら育てていく

という4Dサイクルを紹介しました。

前回の記事で「理屈は分かった」という方は多いと思います。 では、実際のふりかえりを探究に満ちたものにするには、具体的に何を、どうすればいいのでしょうか?

Keepの付箋を前にして、「さあ、ここから探究していきましょう!」と語りかけても、おそらくチームからはなかなか言葉が出てきません…(経験談)

そこで鍵となるのが、それぞれの段階でチームの思考を深める「問い」です。今回は、Appreciative Inquiryの4Dサイクルを参考に、チームがKeepをより深く探究するための「問い」を考えてみようと思います。

第一回、第三回は以下からご覧ください!

Discovery:Keepの中で「何が起きていたのか」を見つける

まずはDiscovery(発見)のフェーズです。 例えば、

「今回のスプリントレビューは、ステークホルダーとすごく良い対話ができた」

というKeepが出てきたとします。 これに対し、いきなり「なぜ上手くいったんでしょう?」と聞いても、「うーん……なんでだろう?」となりがちです。

なので、いきなり理由や要因を聞くよりも、まずその場で何が起きていたのかを具体的に思い出すところから始めます。

場の思い出しを促す問いとしては、例えば、

  • 具体的に、どこが「良かった」と感じた場面だったのですか?

  • そのとき、何が起きていたのですか?どんな気持ちになっていましたか?

  • 誰がどんなことをしていましたか?

  • 誰と誰の、どんな会話がありましたか?

  • その瞬間、チームや場はどんな状態でしたか?

  • 普段と違ったことはありましたか?具体的にどう違いましたか?

  • いつものスプリントレビューと比べて、何が違いましたか?

などが使えそうです。

個人的には、「いつもと何が違った?」 という問いがお気に入りです。

これらの問いによって、例えば

「そういえば、いつもは完成した機能を順番に説明して終わってるけど、今回は途中でAさんがステークホルダーに質問してたよね」

という話が出てくるかもしれません。これはチャンスです!もう少し具体的に聞いてみましょう!

「Aさん、具体的にはどんな質問してたのですか?」

「『この先、この機能をユーザーにどう使ってほしいですか?』って聞いていたと思います。」

どうでしょうか。Keepに「良い対話ができた」とだけ書かれていた状態から、一気に情報量が増えましたよね。 ただこの段階では、「Aさんのこの質問がレビュー成功要因だった」かどうかはまだ分かりません。

しかし、ここで思い出された「実際の出来事」は、この後の探究の材料になります。 その意味で、Discoveryでの思い出しは非常に重要なフェーズだと言えますね!

Dream:「こうなったら最高!」を考える

次はDream(理想を思い描く)。 Keepしたいと感じるほど「良かった出来事」を、未来に対して大きく広げてみるフェーズです。

さて、先ほどと同じく

「今回のスプリントレビューは、ステークホルダーとすごく良い対話ができた」

というKeepで考えてみましょう。 Dreamでは、「良かったこと」がさらに発展した未来をチームに想像してもらいます。 そのために、使えそうな問いを考えてみると、

  • こういうレビューが毎回できるようになったら、チームやプロセスの何が変わりそう?

  • ステークホルダーと、今回以上にもっともっと良い対話ができるようになったとして、それはどんな状態?

  • 半年後もこのレビューの状態を続けられていたら、チームやプロダクトはどうなっていそう?

  • ステークホルダーとの対話の内容だけでなく、「スプリントレビュー、こうなったらもっと最高!」と思える状態は?

  • このKeepをスプリントレビュー以外にも広げられるとしたら、それはどこで、どんなふうに?

  • 今回より10倍良い「対話」ができるようになったら、レビューやチーム、ステークホルダーとの関係性に何が起きそう?

こんな感じでしょうか?

「10倍」はちょっと大げさですが、こういう極端な問いが本質を連れてくることもあるので、個人的には結構好きな問いです。

これらの質問をきっかけに、例えば 「毎回ステークホルダーからプロダクトの新しいアイデアが出てくるようになったら最高だよね」 という話が出たとします。

すると、単に「今回のレビューは良かった。Keep!」で終わっていたものが、「ステークホルダーと一緒にプロダクトのより良い未来を考えられるレビューにしたい」という、さらに高いレベルのチームの望みへと変わっていきます。

Keepの発展を現実的な範囲だけで考えていると「今のまま続けよう」で終わってしまうことが多いです。 その時に、さらに発展した、少し大げさともいえる「より良い未来」を考えると、チームの「こうなったらいいな」という希望や欲求が見えてくることがあります。 これが、Dreamの重要なポイントです。

Design:「より良い未来をどう作る?」を考える

Dreamで「こうなったらいいな」が見えたところで、次はDesign(設計)のフェーズです。 ようやくTryに繋がりそうな予感がしてきましたね。

ここでは、 「Keepしたい出来事・状態をもう一度、あるいはもっと多く起こすために何ができる?」 を考えます。

例えば、

  • 今回上手くいったことの中で、次も再現できそうなものは何?逆に再現が難しいものは?

  • もう一度この状態に至るために、必要なもの・意識すべきことは?

  • チームの習慣や仕組みにできそうなことはある?

  • 誰でもできる形にするとしたら、何をどうすればよさそう?

  • 他の場所・場面でも試せそうなことはある?

  • 再現を邪魔しそうなものはある?それは何?

  • 次のスプリントでより良い状態をめざすとして、小さく試すなら何ができそう?

最後の「小さく試すなら何ができそう?」は個人的お気に入りですね。 理想が大きくても『小さく試すなら?』と聞くと、次の一歩を考えやすくなるからです(そしてその一歩がとても大事!)。

さて、ここまで見てきたスプリントレビューの例では、 「毎回ステークホルダーと未来について話せるレビューにしたい」 というチームのDreamがありました。

そこで「それを実現するために必要なものは?」という問いを投げるのですが、ここで活きてくるのが「Aさんが質問したところからステークホルダーとの対話が広がった」というDiscoveryでの発見です。

すると、思いのほか素直に

「次のレビューでは、デモする機能ごとにステークホルダーへ聞いてみたいことを一つ考えておく」

という案が出てくるのではないでしょうか。 ただ「継続すればいい!」と考えていたころから一変、具体的で試しやすいTryが見つかった瞬間です!

第一回では「このKeepを更に発展させるため!何かできることはありますか?」と聞くと場が静かになる話を書きました。 これは「このKeepの成功要因はなんですか?」「Keepをさらに発展させた先で実現したいより良い未来は何ですか」という問いを、抽象的かつ一足飛びに質問してしまっていたからだと、今なら言えそうです。

しかし、DiscoveryとDreamを経由したあとであれば、チームはその答えに必要なものを整理できています!(たぶん!きっと!) そこでは「次にできることは?試してみたいことは?」という問いの難易度がずいぶん下がっていると思います。

Destiny:変化をどう育てる?

最後はDestiny(実現)です。 ここは単に「Try決まりました!終了!」とするフェーズではありません。 望ましい未来に向けて実際にどう行動し、変化をどう育てていくかを考える段階です。

ふりかえりで考えるなら、

  • まず誰が試してみますか?

  • いつ試せそうですか?

  • どんな状態になったら「上手くいった」と言えそうですか?

  • 次のふりかえりでは何を確認したいですか?

  • やってみて上手くいかなかったら、何をどう変えてみましょうか?

  • より良いアクションやその継続のために、他に誰を巻き込むとよさそう?

  • 実践の中で観察・計測したいことは何?

  • このTryから、何を学べたら嬉しい?

といった問いが使えそうです。

特に、「どんな状態になったら上手くいったと言えそう?」は大事だと思っています。

例えば、先ほどの

「次回は、デモごとに質問を一つ用意する」

をTryとして実施するとします。 ただ、質問しただけでこれは成功なのでしょうか?

本当に実現・確認したいのは、

「またステークホルダーから意見やアイデアを出してもらえた」

「チームとステークホルダーの会話がさらに増えた」

などの状態や変化のはずです。

Tryそのものはあくまで手段! そのTryによって、どんな変化が起きるとよいのか。それをどう測るのか・観測するのか がより大事な観点です。

ここがしっかり話せていれば「質問を用意したけど、別に良い対話は増えなかったね」という結果からチームが学べます。 今回の例なら「単に『質問を用意すれば対話が増える』というわけではない。まだ他に重要な要素がありそう」といった学びがありそうです。

そして、

「じゃあ質問の内容かな?」 「タイミングだったのかな?」

と、次の探究を始めることができます。 Keepから始まった学びが、一回のTryで終わらずに、今後も続いていく「探究の旅」へ変わった瞬間です。

その場に合った問いを選ぶ

ここまでたくさん問いを書いてきましたが、これらは「一回のふりかえりの中で全部確認しなきゃいけないこと」ではありません。 単純に大変ですし、時間も足りないと思います(おそらく、ちゃんとやりすぎるとDiscoveryだけで30分くらいかかります)。

なので、実際にはKeepやその場の状況に合わせて、チームが扱いやすそうな問いを数個試してみる、くらいがいいと思っています。

例えば、 「ペアプロ良かったね!」 というKeepが出たら、

「具体的に何が良かったの?」

だけ聞いてみる。そこで、 「一人で詰まる時間が減った」 という話が出たら、

「そういう状況がもっと増えたら、チームはどうなりそう?」

と、すかさずDreamへ進んでみる。 そこから話が広がればDesignへ。広がらなければ、そのKeepについては「良かったね!」で終わってもいい。 すべてのKeepを無理やり探究し尽くす必要はないと思います。

ふりかえりの場に、成功についてもう一歩考えるための問いの選択肢を持っておく。それくらいがちょうどいいのかなと考えています。

「成功要因」を当てる必要はない

Keepの探究を進めていると、「今回はこれをやったから上手くいったんだ!」と、断定的な話/雰囲気になることがあります。 ただ、先にも書きましたが、本当にそうなのかはその時点では分かりません。

レビューが盛り上がったのは、Aさんの質問が良かったからかもしれない。 たまたまステークホルダーの関心が高い機能だったからかもしれない。 その日の参加メンバーが良かっただけかもしれない。 いろんなことが重なって、偶然起きただけの可能性すらあります。

なので「何が成功の要因だったのか」探しを無理に頑張る必要はないと思います。 むしろそれが後の探究を阻害する可能性すらあるので、「Aさんの質問が効いていたのかも?」くらいで止めておくのが良いのかなと考えています。

そのため、Keepの探究から出てくるTryは、「成功要因を特定・断定した結果」としてではなく、「これが良かったのかもしれない」という仮説を確かめるための実験 くらいに捉えるのが良いと思います。 そう考えることで、チームも気軽にTryを考えられるようになると思います。

おわりに

今回は、前回紹介したAppreciative Inquiryの4Dサイクルを参考に、ふりかえりでKeepを探究するための問いを考えてみました。 チームがふりかえりから探究を始めるために、これらの問いは大きな力を貸してくれます。 ぜひ「問いかける力」も、実験と実践をくりかえして身に付けていってみてください!

さて、これで無事、KeepからTryを出す方法までたどり着きました。 めでたしめでたし!ハッピーエンド!...と終わってしまいたいところですが、最後に一つだけ気になっていることがあります。

そもそも、

KeepからTryを出すことって、そんなに大事なんでしょうか?

ここまでずっと考えてきたテーマの最後にそれを言うのか、という感じですが、最終回では少し視点を引いて

「ふりかえりでTryを出すって、そもそも何のためなの?」

そして、「私たちは、ふりかえりを通してチームに何を起こしたいのか?」 について考えてみようと思います。それでは、また!

付録:探究を促す「問い」の早見表

ふりかえりの場で使いやすいように、この記事で紹介した問いを4Dサイクルごとに整理してみました。 Keepやその場の状況に合わせて、「今のチームがもう一歩考えられそうな問い」を一つ選ぶ ための補助ツールとして、ぜひ使ってみてください。

(3項目)フェーズ・こんなときに使う・問いの例

フェーズ

こんなときに使う

問いの例

Discovery
何が上手くいっていたのかを発見する

Keepが抽象的で、

「良かった」以上のことが

まだ分からないとき

・具体的に、どこが「良かった」と感じた場面でしたか?
・そのとき、何が起きていましたか?
・誰がどんなことをしていましたか?
・いつもと何が違いましたか?
・そのとき、どんな気持ちになっていましたか?

Dream
Keepが発展した未来を考える

「次も続けよう」で

話が終わりそうなとき

・これが毎回起きたら、何が変わりそう?
・もっともっと良くなったら、どんな状態になりそう?
・半年後もこの状態が続いていたら、チームやプロダクトはどうなっていそう?
・「こうなったら最高!」と思える状態は?
・このKeepが10倍になったら、何が起きそう?

Design
望ましい未来を作る方法を考える

目指したい状態は見えてきたが、

まだ具体的な行動が見えていないとき

・今回上手くいったことの中で、次も再現できそうなものは?
・もう一度この状態を作るなら、何が必要そう?
・チームの習慣や仕組みにできることはある?
・誰でもできる形にするとしたら?
・次のスプリントで小さく試すなら、何ができそう?

Destiny
実際に試し、変化を育てる

Tryが決まり、

「やること」自体が目的になりそうなとき

・まず誰が、いつ試してみますか?
・どんな状態になったら「上手くいった」と言えそう?
・何を観察・計測しておきたい?
・次のふりかえりでは何を確認したい?
・このTryから、何を学べたら嬉しい?

迷ったら、まずこの4問

たくさんあって迷ったら、まずはこの4つから始めてみるのをおすすめします。個人的にもよく使う問いです!

  1. Discovery:「その時何が起きていた?いつもと何が違った?」

  2. Dream:「もっと、こうなったら最高!ってどんな状態?」

  3. Design:「次のスプリントで小さく踏み出せる第一歩を考えるとしたら、何ができそう?」

  4. Destiny:「どんな状態になったら、上手くいったと言えそう?」

KeepからいきなりTryへ飛ぼうとせず、 何が起きた? → もっと良くなったら? → 何を試す? → 何を見て学ぶ? という流れを頭の片隅に置いておくだけでも、Keepについて話せる幅はかなり広がると思います。 お試しあれ!

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この記事を書いた人

大和 拓朗
大和 拓朗
2018年にメンバーズに中途入社。Webアプリケーションエンジニアとして開発を行いながら、チームへのスクラム導入・推進役を担当。2022年に、よりスクラムに精通した人材となるべくCertified ScrumMaster®の資格を取得。現在はスクラムマスターとして社内のアジャイル文化醸成を行いつつ、クライアント向けにチームの立ち上げやスクラム導入支援を行っています。
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