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アジャイルな「ふりかえり」の新しい手法。「チームドック」でチームの健康診断をしよう

miroで書いたチームドックの説明書
miroで書いたチームドックの説明書

※こちらの画像作成にあたり、ふりかえりカタログ(コミュニティ版)Open in new tabのフォーマットを参考にさせていただきました!

はじめに

チームやプロダクトの状態を、健康診断のようにふりかえるフレームワークを作ってみました。
よかったら使ってみてください!(そしてフィードバックをください!)

どんな手法?

プロダクト・チームの状況を「人体」に例えて、健康診断のようにふりかえる「メタファーふりかえり」です。

「健康診断」のように定期的な実施を意図したフレームワークで、客観的/俯瞰的な視点でチームやプロダクトを眺める => 状況改善につなげられるのが特徴です。

進め方

  1. 簡単な「人体」をホワイトボードに描く。
  2. 体の部位(手や足などの他、胃、心臓などの内蔵)の付近に付箋を貼り、そこが今どういう状態になっているかを各自が書いていく。(どこが痛むのか、どこが好調なのか、違和感のある場所はどこなのかを「自己診断」するように)
  3. 付箋に書いた内容をチーム内で共有する
  4. 体全体をチームで俯瞰し、この人はどんな状態に見えるかを話し合う(風邪っぽい、今すぐ入院が必要、大怪我、大いに健康、など)
  5. 「(不調の場合)体の不調を解決するために何をするべきか、どんな治療法が考えられるか、不調の改善に必要なものは何か」「(生き生きとした体であれば)次に何をしたいか」などをチーム全員で話し合う

何が良い(と思って作った)手法なのか

<直感的で分かりやすいメタファー>

「体の健康」という誰にとっても身近でイメージしやすい題材によって、専門知識の有無にかかわらずチーム全員が参加しやすいふりかえり手法になっています。

<心理的安全性の高い場づくりに貢献>

メタファーを活用することで、本音が出しやすい場づくりが促進されます。

例えば、なかなか「プロセス・チームに問題がある」と直接的に指摘することは難しいですが、「胃の調子が悪い」といった比喩表現を使うことで、問題に言及する側の心理的ハードルを下げ、チームメンバーも個人攻撃やネガティブな話と捉えにくくなります。

<チームやプロダクトの全体感を共有できる>

個々の問題(付箋)だけでなく、「人体全体」を俯瞰して「この人(チーム・プロダクト)はどんな状態か」を議論することで、個別の事象の裏にある、全体的・根本的な課題やパターンに気づきやすくなります。

<ポジティブな側面にも触れられる>

「体の不調」だけでなく、「好調な部分」や「次に何をしたいか」にも目を向けることで、チームの強みや成長を再認識することができます。また、モチベーション向上や新しい挑戦にも繋がります。

活用方法のヒント

1.メタファーガイドを用意しておく

「どんな例えを書くか」が参加者の解釈に委ねられている自由さがこのフレームワークの良さですが、一方で「何をどう書いたらいいのか分からない」「議論が発散しすぎる」といった状況もよく起きます。

そのため、ファシリテーターは人体の各部位の「メタファーガイド」を用意しておくと、スムーズな「診断」に役立ちます。

【メタファーガイドの例】

  • 頭(脳)🧠: チームの意思決定、計画、戦略、学習
  • 目 👀: 顧客視点、集中、将来の見通し
  • 耳 👂: ステークホルダーからのフィードバック、他チームとの連携
  • 口 👄: コミュニケーション、情報発信、チーム内の発言量
  • 心臓 ❤️: チームのモチベーション、情熱、プロダクトへの想い
  • 胃腸 🌀: タスクの消化、プロセスの健全さ、情報の処理能力
  • 手 ✋: アウトプットの質と量、具体的な作業、スキル
  • 足 🦵: ベロシティ、開発のスピード、前進する力
  • 背骨 🦴: チームの文化、原則、土台となるもの
  • 免疫系/皮膚 ✨: 障害への対応力、問題からの回復力、外部からのプレッシャーへの耐性

これらの役割を最初に提示し、「例えば、口は『コミュニケーション』や『情報発信』を表しますが、皆さんの自由な解釈で貼っていただいても構いません」とアナウンスすることで、自由度と議論のしやすさを両立できると思います!

2. 「問いかけ」を工夫して多角的な視点を引き出す

付箋を書いたり、全体を眺める際に、ファシリテーターが「問い」を投げかけることで、より深く、多角的な意見を引き出すことができます。

例えば、以下のような感じです

  • 不調 (痛み・違和感)
    • 「ズキズキ痛む場所(=継続的な問題)はどこですか?」
    • 「最近、急に痛くなった場所(=突発的な問題)はどこですか?」
    • 「なんとなく重い、だるい場所(=言語化しにくい違和感)はどこですか?」
  • 好調(エネルギー・成長)
    • 「エネルギーがみなぎっている場所(=今のチームの強み)はどこですか?」
    • 「最近、筋肉がついた(=成長・スキルアップした)と感じる場所はどこですか?」
    • 「柔軟性が高まった(=変化に対応できた)と感じる場所はどこですか?」
  • 全体: 変化と未来
    • 「前回と比べて、良くなった/悪くなった場所はどこですか?」
    • 「この体で『アスリート』を目指すなら、次に鍛えたい場所はどこですか?」

「診断」から「処方箋」への具体的な流れを作る

「風邪っぽい」「痛みがある」といった診断の後、対応策を「処方箋」として出すことで、ここでもメタファーのメリットを活用しつつチームのTryを出すことができます。

【処方箋のカテゴリ例】

  • 薬の処方 💊: 新しいツールや技術の導入、ルール(薬の用法・用量)の策定
  • 食事療法 🥗: 日々の仕事の進め方(デイリースクラムなど)の見直し、インプットする情報の質を高める
  • 運動療法 💪: 新しいことへの挑戦、勉強会、スキルアップのためのトレーニング
  • 休養 😴: タスクの棚卸し、技術的負債の返済、無理な計画の見直し
  • 精密検査 🩺: 問題の根本原因を深掘りする (5つのWhy分析など)
  • 専門医への相談 👨‍⚕️: 他のチームや専門家に助けを求める

ここでも、ファシリテーターが「私たちのチームの『胃もたれ』を治すために、どんな『処方箋』が考えられますか?」のように問いかけることで、具体的なアクションが出やすくなると思います!

終わりに

このふりかえり手法は、以下の「アジャイルと健康改善は同じ!」という動画を見たときに「そうじゃん!」と強く思ったその勢いで作りました。

なので、まだ私自身も試していません。ここから先はみなさんの目で確かめてください!
ただ、定期的に行うことで価値があるメタファーふりかえりとして、個人的に手応えがあります!
もしよかったらチームで試してみてください。使ってみた感想や改善点など、#BEMA Lab でX(Twitter)でのコメントでお待ちしています!よろしくお願いします!

https://x.com/BEMA_LabOpen in new tab


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この記事を書いた人

大和 拓朗
大和 拓朗
2018年にメンバーズに中途入社。Webアプリケーションエンジニアとして開発を行いながら、チームへのスクラム導入・推進役を担当。2022年に、よりスクラムに精通した人材となるべくCertified ScrumMaster®の資格を取得。現在はスクラムマスターとして社内のアジャイル文化醸成を行いつつ、クライアント向けにチームの立ち上げやスクラム導入支援を行っています。
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